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「オカンが俺のこと、疎ましく思ってるのわかってた。俺がオトンに“気に入られてる”からでしょ?助けてくれもしないで、恨むなんておかしいって思ってた」
微かに震えるともの手。
引き止められたのは、支えていてほしいからか。
優しく包み込むと、ともは言葉を続ける。
「だけど、先に手振り払ったのは俺だったんだね。オトンが初めて外に女の人作った時、オカンは気丈に振る舞ってた。その時に、もっとちゃんと話聞いてあげればよかった。まだ子供で、何にもわからなかったかもしれないけど、俺は、俺だけはオカンの味方でいなきゃいけなかった…」
はらり、と涙が溢れた。
拭うこともせず、水滴はともの白い肌を滑っていく。
「生きてるうちに、オカンに会って謝ればよかったよね。怖くてできなかった。ごめん、ごめんなさい…」
「とも、そんな泣かんといて。オカンもきっと責めてないから」
しゃくりあげる肩が心細く見えて、そっと抱き止める。
「大ちゃんが連れてきてくれなかったらきっと俺、ずっと行かないままだった。見て見ぬふりして生きてたと思う。帰りたくなかったのはほんま。でも…」
心のどこかでは、強引に引っ張ってでも連れてきてほしかった。
ともはそう言った。
「わがままでごめんなさい」
「ええよ。ともは俺にとってほんまに大切な人やから」
弟、って言葉、喉をつかえて出てこなくなってもうて。
でもそんな些細な言い回し、ともが気にするはずもなく。
ありがとうってようやっと笑ってくれた。
二人でお墓を綺麗にする。
オカンが亡くなる前も、親戚の間で代わりばんこに掃除してたからお手の物。
まごまごとするともに指示を出しながら進めていく。
「…帰ってきたくなかったのはさ、なんで?やっぱりこっちにはいい思い出ない?」
「んー」
ゴシゴシと墓石を磨きながら、ともは曖昧な返事をする。
まだ言えないことがあるのか。
少し傷つきながら話を逸らす。
「家、ガスとか電気とかはもう払ってないから今日ホテルでええ?駅前のビジホ予約したんやけど」
「うん。ありがとう」
途切れた会話。
何か話題を振ろうと口を開いても、適切なものは出てこなくて。
「あの、」「大ちゃん、」
重なった言葉に、どうぞとお互い手を差し出す。
「ええよ、ほんま大したことないから。ともはなんて言おうとしたん?」
「俺も大したことないし」
「聞かせて」
「……大ちゃんが話したかったことって何?って聞こうとしただけ。でも、ここで話すようなことやなかったら、ごめん」
「…、」
そうやな、話さなあかんよな。ちゃんと。
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ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん!コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2023年1月6日 16時