#17 ページ17
「なぁ大ちゃん」
「ん?」
毎年恒例、残暑と言うにはあまりに暑すぎる気温は夜になってもそう下がらない。
お腹冷やさないようにと申し訳程度にかけるタオルケットは、いつも夜中にともによって蹴飛ばされる。
「大ちゃんは俺のこと好きなん?」
「好き。当たり前やん。大切な弟やで」
「そうやなくて…、」
カーテンの隙間から漏れ出た月の光が、ともの顔を照らし出す。
下から覗き込むように渡された視線はどこか物憂けどいうか、ちょっと沈んだそれだった。
「りゅーせー、彼女ができたんやって。毎日イチャイチャチュッチュしてるわぁって言ってた。…キスって恋人のもんやろ?俺と大ちゃんは恋人?」
高校生のくせに、言い方がオッサン臭いぞイケメン君。
そんなツッコミが浮かんだのはある意味現実逃避。
さて、何で答えれば良いものか。
「んー、ともは?俺のこと好き?」
「…質問の答えになってない」
「好き同士やなきゃ恋人なんて夢のまた夢やで」
「、」
兄弟としての縁は、きっとこれからもずっと切れない。
血のつながりってそういうもん。
でも血のつながりゆえに俺ら二人に恋人だなんて選択肢は用意されていない。
最近、俺が堂々巡りをしてる悩みこそ、ともが投げかけた質問そのものだった。
「…好き。大ちゃんのこと好き。ずっと一緒にいたい」
「そっか」
ともががさごそと音を立てる。
タオルケットを蹴飛ばすと俺に覆い被さるようにして見つめてきた。
「なぁそしたら俺ら…」
「とも。先には進まへんで」
え、とともの小ちゃい唇から声が漏れた。
「…やっぱりそういう魂胆?ともがあんなこと聞いてきたのは」
「っ、ちゃう!ちゃう、けど……大ちゃん、こんなんじゃ別の人と付き合えへんやろ?やから代わりに俺のこと、…それにわかってる。高校生にもなって兄弟で同じベッドで寝てるのはおかしいって」
ぽろぽろと涙が溢れ始めた。
そうすると俺は焦って戸惑って。
「ごめん、泣かせるつもりなかってん。大丈夫、大丈夫やで。兄弟やねんからおかしいことなんてないし、俺が大切なんはともだけ。ともさえ居れば、俺何もいらへんから…」
ベッドの隣に着地するように引き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。
まだ成長途中の華奢な体は、少し身じろいだ後すっぽりと収まった。
「やから、安心して寝ぇや?もう眠たいんやろ」
重力に逆らう力の弱くなったまつ毛がふわふわ揺れてる。
安心したのか急激に瞳の覗くまでのインターバルが長くなった。
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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん!待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます!!! (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2022年10月24日 14時