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#16 ページ16

9月は進路調整に奔走する一ヶ月になった。
とは言っても、オトンは自分の好きなようにしなさいって言ってくれたから(無関心とも言う)、もっぱら話つけるのは担任と。
二言目には保護者連れてこいという担任は厄介だったけど、あっちも進学率やら合格率やら追わなきゃいけない数字があるんだろう。
結局、そんなにしつこいなら校長に言いますよと脅したら、簡単に折れたけど。

「あれ、電話や。大ちゃんごめんけど先食べてて」

二人きりの食卓にぽつんと残された。
待っていようかと思ったけど、「もしもし、りゅーせー?」という言葉に箸を手に取る。
一年生の頃から仲が良いというクラスメイトとの電話は、大抵長い。

「…いただきます」

これからもずっと一緒、死ぬまで一緒。
兄弟なんやから当たり前だと思ってたけど。
一緒に夕飯食べて、同じベッドで寝て、そういうことは永遠じゃないってわかってる。
いつかこうして一人寂しく過ごす日が来るんかな。
あの日から…お祭りの日から、ともとの関係を考えることが増えた。
一人になるとすぐ物思いに耽るのが癖みたいになりつつある。

「ごめん、お待たせ」
「ううん。早かったやん」
「明日提出のプリント、どんなんやっけ?って。なくしたみたいで、探すから切るって言われた」
「流星くん、相変わらずマイペースやなぁ」

まぁ、それが彼の良いところでもあるんやろけどな。
キリっとした男前な顔からわずかに滲む柔らかなオーラは、そのマイペースさ故の部分も多そうで。

「とも居らな生きていけないんちゃう?笑」

ふざけた口調に乗せて、結構本気。
俺がもし同じこと言ったら、ともはなんて言うのかな。

「りゅーせーの場合、別に俺やなくても良いんやと思う。彼女居る時はその子に頼りっきりやし。まぁそれが原因で振られるんやけど」

“もっとしっかりしたクールな人やと思ってた…!”って。
しなを作ってわざとらしくそんなこと言う。
あのイケメン君が振られる理由はいつもそれらしい。

「…ともは俺の面倒も見なあかんからな」
「ふふ、うん」
「そこ否定するところちゃうの?笑」

口ではそう言っても内心心臓バクバク。
はにかむようなともの笑顔がたまらなく愛おしくて。

「ちょっと、ご飯中やで」

そう言いながら目を瞑るから、ともはずるい。

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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん!待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます!!! (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2022年10月24日 14時

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