#13 ページ13
毎年訪れる穴場は今年も人が居らんかった。
俺たちだけの秘密基地。
皆、ここの下の広場か川のすぐそばに行くから。
「俺たちもう十年前もに見つけたのに、まだ穴場ってすごない？」
戦利品を抱えながら、座ってくださいと言わんばかりの岩に腰かける。
チョコバナナとりんご飴とみてるだけで甘い組み合わせも、ともにとっては両手に花。
ちなみにクレープも箸巻きも既にともの胃の中に吸収されてる。
「まぁ一番見えやすいかっていうと、そうでもないからな」
ところどころ木の枝が視界を遮るけど、それでも十分。
この街の人びとは欲が深すぎると結論付けて俺も焼きそばのパックを開封した。
輪ゴムを外すとぺん、と情けない音がしてプラスチックの蓋が口を開ける。
「美味しそう」
「食べすぎやない？ぷよるで」
「うるさ、まだクレープと箸巻きしか食べてへんし」
「両手に持ってるそれはなんや？」
「もぉ、甘いものは別腹やねん。ほっといてや」
やいやい言い合っている間に、花火の上がる特徴的な音がする。
ひゅ〜、という音につられるように二人揃って空を見上げた。
「…きれい」
紡がれた言葉は小さいのに、花火にかき消されることなく俺の耳に届く。
心地よい、幼さを残した声。
「そうやな、綺麗やな」
ともの頬は赤に緑に、花火の散らす色に染まる。
花火よりお前の方が綺麗やで、なんて有り体なこと言おうかと思ってやめた。
・
歩き疲れた足をかばうように、少し不規則な下駄の音が響く。
楽しい時間はあっという間。家の玄関が見え始めれば嫌でも現実を思い出す。
「あ、洗濯物畳まな」
それはともも例外ではないようで、小さなため息がこぼれる。
夏の空気をはらんだコンクリートの熱を感じながら思わず小さく笑った。
「主婦みたい。笑」
「せめてお嫁さんって言うてや」
「何が違うん」
「えぇ？わからへんの？」
お嫁さんのほうが何かいいねん、ってともも何が違うか上手く説明できないんかい。
「あれ、鍵開いてる」
「え？閉め忘れた？ごめん」
「ううん…」
そう言って黙り込んでしまったのは、ともが思わぬ来訪者を予測したからだろう。
俺の誕生日。腐っても父親のあいつが家に来ていてもおかしくない。
「どうする？とも」
「ん？なにが？」
少しだけ震えたともの腕を掴む。
いっそ、逃げてしまおうか。
そんな言葉を戸惑いなく口にできたのは、俺が一つ大人に近づいたからかもしれない。
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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん！待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます！！！ (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2022年10月24日 14時
