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#12 ページ12

「大ちゃん、今のところで正式に働くことになってもここにずっと居ってくれるよね?」

俺のこと覗き込むように飛び込んできたともの瞳は、街灯の光を反射してきらきらうるうるしてる。

「大丈夫よ。ずぅっととものそば離れへんから」

色違いの浴衣を着て、川沿いの花火会場に向かう。

「よかった。…あ、なぁ俺今日お金たくさん持ってきてん。やから、奢ったるからな!」

誕生日に対して俺より浮かれているともが隣に居るから、こっちはかえって冷静で。
9月1日まで延命してもらった現代文の課題に思いを馳せながら頷く。
勿論、弟に奢ってもらおうなんて微塵も思ってないけど。

「大ちゃんはいつも通り焼きそばとお好みやろ?俺どぉしよかな、今年からクレープ出るねんて」

有名チェーンのアイス屋さんのクレープ。
月の最後も選択の楽しみがあるようにアイスは32種類やねんて、とともがどや顔で言う。

「俺が来年も居るって言うた途端口数増えたな、かわええ奴め」
「ちゃうし、屋台見えてきたから…」

俺の方見てほっぺた膨らしたかと思えばまたキョロキョロ。

「とも、危ないから前見て」

花火の開始時刻までまだ時間があるとは言え、既に人は溢れ始めてる。
正面から酔っ払いが来たから、とものことを引き寄せる。

「っわ、」
「ごめん強く引っ張りすぎたわ。足やってない?」
「ん。だいじょぶ」

慣れない下駄がカラコココンと不規則なリズムを奏でる。
引き寄せたことで崩れたバランスを立て直すと、ともは真っ白な手を伸ばしてきた。

「手、繋いでて。はぐれちゃいそう」
「はいはい。おにーちゃんが保護者やってあげますからね」

繋いだ手をわざとらしくぶんぶん振る。
なんだか緊張するのはともが浴衣着てるから?
ヘアピンでおしゃれしたともは何だか色っぽくて目をそらしてしまう。
これじゃあクズのオトンと同じや。自分が情けなくて、手の力が抜ける。
それを嫌がるように、ともがぐっと手を引っ張った。

「大ちゃん」
「んえ、」
「聞いてなかったやろ?箸巻きあるけど買う?って聞いたのに」
「あぁごめん。とも食べるなら、一口ちょうだい」
「わかった。じゃあ列並ぼう」

変な感じ。自分が自分やないみたい。
きっと、当時はそんなこと思ってた。

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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん!待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます!!! (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2022年10月24日 14時

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