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夏の終わりよりも少し早い、夏休みの終わり。
ひーひー言って課題を片づける俺を横目に、ともは夕飯の支度をしていた。
「もう無理、絶対終わらへん」
「何で早いうちからやっておかへんのよ。俺高3の内容なんてわからへんよ」
「ほな代わりに税の作文書いてや」
「それ俺自分の分既に書いているし」
喋ってないで手ぇ動かしやと至極真っ当な言葉にうなだれる。
明日から学校。バイトで染められた特筆事項のない夏休みのどこに宿題やる時間があろうか。
「とも、もっと夏らしいことしたかったよなぁ。どこも連れていけなくてごめん」
「ん〜?楽しかったで。友達とプール行ったし、今年も大ちゃんの誕生日に花火大会あるやろ?それで満足よ」
夏の終わりに開催される花火大会は、市の記念日だか何だかで毎年俺の誕生日に開催される。
どうせなら夏休みのうちにという不満は、そもそもが夏の風物詩としてではなく記念式典の一面を持つものだという点でお門違い。
「浴衣、ええの見つかった?」
「去年のでええよ。俺あれ気に入ってるし」
「でも…」
「あ、じゃあ今年は大ちゃんのと俺の交換こして着よや」
換気扇のスイッチをかちゃんと押す。
あかん、時間切れや。広げていたテキストを閉じて、ダイニングの机を拭く。
「とも、」
「なぁに?勉強終わったなら箸とお皿出してや」
「とも、たくさん我慢させてもうてごめんな。最後の夏休みやし、もっとたくさんともと過ごせばよかった」
口約束とはいえ、オトンはともの学費を払うって言った。
それなのにバイトのシフトをキツキツに詰め込んでしまったのは、あんな奴に頼ってたまるかって俺の強がり。
来年からは社会人になって余計にともとの時間が減っちゃうのに…。
「何泣きそうな顔してんねん。そら寂しかったけど、大ちゃん頑張ってるから俺も頑張ろうって思ったよ。それに夜は一人やないし」
あれからオトンとは何もないみたい。
尤も、俺に隠しているだけという可能性はゼロではないけど、オトンが帰ってくる頻度が減ったから。
ともの身体目当てで半休取ってたなんて幻滅する気持ちしかないけど、確かにともは若い頃のオカンによう似てる。
俺がお腹ん中でオトンの遺伝子、ともの分まで吸収してきてしまったのかも。
父親似の俺と、母親似のともは二人だけでいると兄弟やって思われないこともある。
まぁ、横にオトンとオカンがいるとそれぞれが極端な例ってだけだとわかるけど。
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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん!待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます!!! (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2022年10月24日 14時