#66 ページ26
未だイルミネーションで盛り上がっているであろう外を尻目に、順番に風呂に入ることに。
せっかく神ちゃんにセットしてもらったのにぃ、とちょっと寂しそうにシャワーに向かうのが可愛かった。
雨にも似た水音をBGMに、昨日の流星の言葉を思い出す。
彼の考え、というのは大学で脳の構造や記憶能力についても詳しく学んだ中間先生の話に基づくものらしい。
しげの記憶の状態は、火曜日とそれ以外の曜日とで分かれているように見える。
あるいは、人格が別で形成されているのかもしれない。
そこに関しては精密に検査をしないとわからないけれど、一つ確かなのは、とにかく、記憶の共有はされていないということ。
じゃあ、火曜日以外のしげに告白をしたらどうなる？
そもそも彼のこの不思議な状態には、俺との交際が関わっているように見える。
もしこの恋人関係がトリガーなら、他の曜日に同じ刺激を与えてみる価値はある、と。
俺には難しいことわからへんけど、と流星は眉を下げながら言った。
もし、記憶の解決にならなくても、幸せが七分の一から、全部になるなら告白したら良いんやない？って。
「…はぁ、」
振られたらどうすんねん。
そしたらきっと、七分の一からゼロになる。
…それでも。
「ふいーっ、神ちゃーん、上がったで」
「はいはい」
それでも、告白したいと思った。
しげから七分の一の愛情を、幸せを、もらうんじゃなくて。
全部欲しいと思ってしまった。
・
12月5日月曜日、23時55分。
あと五分で曜日が変わる。
「…しげ、話があんねんけど」
消灯時刻を過ぎて、外はしんとしていた。
部屋の中も。
ベッドサイドの明かりだけが申し訳程度についているだけ。
淡い光に照らされたしげは、俺の真面目なトーンに気づいて眉を上げる。
「しげのことがずっと前から、」
ああ、なんでこんな緊張してんねやろ。
幼馴染という関係に終止符を打って、変わるって決めたのは俺やのに。
なんでこんなに怖いんやろ。
手が震えるのを無理やり握りしめて抑える。
「ずっと、小さい頃から、好きでした」
しげもあの日、こんな気持ちだった？
…んー、いや、しげはもっと男らしくて、潔かった。
自信あったんかな？
「しげ。俺と付き合ってくれませんか」
未だ震えの止まらない手を、ぎゅっと包み込んでくれたのは。
「喜んで」
しげの温かい手のひら。
時計は、0時01分を指していた。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ次回作もお付き合いください！！ (2021年2月19日 13時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 完結おめでとうございます（ ; ; ）とっても面白かったです！次回作も楽しみにしてます(^^) (2021年2月19日 12時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年2月2日 10時
