#67 ページ27
「もう飛行機出るでー」
空港ロビーに響く桐山先生の言葉に、周りの生徒が荷物を持って移動し始める。
「あー、あと一週間続けば良えのにぃ…」
そう言って嘆いたしげは俺の太ももをポンと叩いて立ち上がる。
「何どさくさに紛れて叩いてんねん」
「えぇ？恋人特権？笑」
今、目の前にいるのは、あの“火曜日のしげ”じゃない。
火曜日の彼は、跡形もなく消えてしまった。
「せっかく神ちゃんとの関係性が変わったんやから。スキンシップは大事にしていかな」
照れたような笑顔。
自分で言っておいて、ソワソワすんなや。もう。笑
「あ、神ちゃん！しげ！そこに居ったん？」
声のする方を振り向けば、のんちゃんと流星の姿。
嬉しそうにぶんぶんと手を振るのんちゃんに応えて手を挙げて、合流する。
「もう移動やで」
「ん。ちょっと急ごっか」
ふと流星と目があったから、グッドサインを出す。
それで理解したらしい彼は微笑むと、しげの名を呼んだ。
「ん？何？」
「泣かせたら、速攻奪う」
「…やれるもんならやってみぃや。絶対泣かせへん」
目的語のないその会話に、のんちゃんは首を傾げるけど。
…急に男前なところ出すなや。ほんま。
しげの真剣な表情を見て、なんとなく照れてしまった。
飛行機の席についてどちらからともなく手を握った。
疲れてる人が多いらしく、話し声はほとんど聞こえない。
静かになるとどうしても色んなことを考えてしまう。
昨日の夜のこと、それよりも前のこと、…火曜日の、こと。
今のしげが大切で、大好きなのは当たり前。
でも、やっぱり少しだけ、覚えていてほしいと思ってしまうのは仕方ないよな？
やって、あんな幸せな時間を俺だけが覚えてるなんて、そんなん俺がずるいやん？
「神ちゃん。クリスマスの予定、空けておいてくれへん？」
「クリスマス？」
「うん。イルミネーション、リベンジしよ」
「…せやな。うん、開けておく」
内緒話をするように、ひそめたしげの声も、返事をした俺の声も、すごく甘い。
「でも不思議やなぁ…。俺、ずっと前から神ちゃんと付き合ってた気ぃすんねやけど」
「、何それ。変なの笑」
・
なぁ、もしかしたら火曜日のしげも彼の心の中にまだ生きてるん？
もしそうなら伝えたい。
一歩踏み出せてよかったよ、これからまた、しげと幸せになるよ、って。
ありがとう、____
・
【拝啓、火曜日の君へ。／fin】
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ナナセ(プロフ) - かこさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ次回作もお付き合いください！！ (2021年2月19日 13時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 完結おめでとうございます（ ; ; ）とっても面白かったです！次回作も楽しみにしてます(^^) (2021年2月19日 12時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年2月2日 10時
