好敵手35 ページ36
研ぎ澄まされた体育館に、清々しいゴールネットを通る音。
一瞬だけ止まった時の中で、それはこだましたようにも聞こえてきた。
そのまま響く、試合終了の合図。
その音を皮きりに、ふたたび体育館の時が戻る。
結果は、ここまで戦ってきた俺達一年生の敗退。
勝利を喜ぶ3年生の声。
しかし、うちのクラスの歓声はそこではなかった。
「黄瀬、黄瀬!!!今の天乃のやつ…!!」
俺に対して基本的にクールな木村っちが、やけに興奮気味で。
俺自身も、驚きすぎて手すりを持つ手が震えた。
「スリー…ッスよ、あれ。それも…そこそこ遠距離の…!!!」
こんなに興奮したの久しぶりかもしれない。
俺は、とびつかん勢いで隣の彼の手を握った。
「そらっちが!!あの、バスケのバの字も出来なかったあのそらっちが!!!三年生を圧倒して…!!!」
「お、おう…?」
「ヤバいッス!惚れる!!!」
「いや、それは元々だろ」
ブンブンと握った手を振り回しているうちに、俺のテンションについてこれなくなった木村っちがげんなりしているのは、この際どうでもいい。
負けてしまったけれど、すごく嬉しかった。
控えめに言っても球技の出来なかったそらっちが、我がクラスの得点王…いや、女王??になったことも。
頑張りが無駄じゃない事を証明できたのも。
何より…みんなに囲まれて、ひまわりみたいに笑うそらっちを見れたことも。
みんな、みんな。
「黄瀬、下!」
気がつけばギャラリーの真下には、女バスメンバーが並んでいた。
「クラスのみんな!応援ありがとうございました!!負けちゃったけど、次の三位決定戦、絶対勝ってみせるんで、最後までもう少しお願いします!!!」
「「よろしくお願いします!!」」
一斉に頭を下げる五人に向けられる盛大な拍手。
顔をあげたそらっちと目があった。
「涼太ぁああ!!」
苗字呼びに直すことも忘れてしまったそらっちから送られるブイサイン。
クラス中からこちらに向けられる生暖かい視線はこの際どうでも良い。
どうせ注目されるのなら。
「やったッスね、そ…Aっち!」
思い切り大きな名前呼びで。
そらっちに負けないくらいの笑顔で、ブイサインを返したのだった。
…今の気分?最高ッスよ!!
……後にこの出来事が、“逆転ロミジュリ”とからかわれるようになるのは、また別の話ではあるが。
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りた。(プロフ) - ひとみさん» 一気に…!?お疲れさまでした、ありがとうございます!クラスマッチ編あともう少しで完結します…!これからもどうぞよろしくお願いします!がんばります!!! (2016年7月13日 8時) (レス) id: 60b76a6687 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ - 一気に読ませて頂きました!とても面白かったです!占いツクールにもこんな作品があるんだなぁと思いました( ˙˘˙ )応援しています! (2016年7月12日 23時) (レス) id: 5dddd6f71b (このIDを非表示/違反報告)
りた。(プロフ) - だおさん» ありがとうございます!黄瀬君にはちょっと格好悪く片思いをして欲しいと思いこうなった次第です。嬉しいです、励みになります!こちらこそ、これからも見守っていただけると幸いです、どうぞよろしくお願いします! (2016年6月25日 10時) (レス) id: c66c29cc58 (このIDを非表示/違反報告)
だお(プロフ) - 初めて見るような内容で楽しく読ませて頂きました(*^^*)これからも頑張ってください! (2016年6月25日 6時) (レス) id: d490ebbd79 (このIDを非表示/違反報告)
りた。(プロフ) - 桃さん» ありがとうございます!あくまで塩対応な夢主ちゃんのデレを早く書きたいなぁとただいま頑張っております!どうぞ温かく見守っていただけると幸いです。これからもよろしくお願いします! (2015年12月30日 14時) (レス) id: 066dfb27bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りた。 | 作成日時:2015年12月5日 23時