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157.見合う女 ページ9

「はいはい、これも、これも。ああ、これも持っていきな」

慌ただしく紅やおしろい、衣を投げつけるのは妓女の花琳(ファリン)である。場所は、娼館の花琳の部屋でAは女童(おんなわらべ)に言われてこちらに来たのだった。

『こんなにいらないよ、花琳小姐(ファリンねえちゃん)

Aは投げられた紅やおしろいをつかむと、そのまま部屋の棚に戻す。花琳は、その様子を呆れた顔で非難する。

「いらないじゃないわよ。あっちじゃもっといいもの使っている奴らばかりなんだからね、ちょっとはまともな格好しなさい。元はいいんだから、もったいないわよ」

『仕事に行くのに洒落(しゃれ)るのは、妓女くらいなもんでしょ』

昨日とってきた薬草を調合したいなあ、とAがよそ見をしていると、木簡が飛んでくる。面倒見はいいが、少々短気な花琳が投げたものである。Aは頭をおさえてうずくまる。

「あんたは、せっかくいい仕事もらえたんだから、それに見合う人間になろうとか思わないわけ?世の中、あんたの立場がうらやましくて仕方ない人間だっているのよ。そこんとこ、感謝しながら生きていかないと、せっかくの上客だって逃げちゃうんだから」

『……わかりました』

やり手婆といい花琳といい娼館の教育は少々手荒い。しかし、花琳の言葉には説得力があり、Aは少しばつが悪そうに木簡を拾う。木簡は何度も書いては削ったあとがあり黒ずんでいて、その上に秀麗(しゅうれい)な文字で歌が書かれていた。花琳は妓女としては、もう引退を考える年齢であるが、今なお人気が衰えないのはその知性があるからだ。歌を作り、碁や将棋を行い、客を楽しませる。色ではなく芸を売る妓女である。

158.花琳→←156.御方



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佐倉(プロフ) - しずくさん» ありがとうございます…!!モチベいただきました!!‬т т (2月23日 22時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - 最近薬屋のひとりごとハマったのでとても更新楽しみですー!頑張ってくださいー!!! (2月19日 4時) (レス) @page17 id: 4b943a174f (このIDを非表示/違反報告)
佐倉(プロフ) - マラカスさん» 教えて下さりありがとうございます。すみません。 (12月21日 18時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
マラカス(プロフ) - オリジナル作品ついてます (12月21日 15時) (レス) @page7 id: 66680d8fcb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:佐倉 | 作成日時:2023年12月21日 7時

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