検索窓
今日:8 hit、昨日:39 hit、合計:49,017 hit

153.再会 ページ5

「ほら仕事だよ!」

やり手婆の声にAはあからさまに嫌な顔をしてみせた。姐にもらい湯をしにくれば、しっかりやり手婆につかまってしまった。なにやらAも短期就労(アルバイト)しなければいけないらしい。

『(なんで妓女なんかにさせたがるんだか)』

考えたってしょうがないことをAは不満そうにぐるぐると考えていた。

「A、ほら化粧するよ」

『はいはい』

姐である林杏(リンシン)はAをグイグイ引っ張っていく。
今宵の仕事はとある貴人の(うたげ)らしい。
林杏と、他数名。皆、麗しい衣を着、艶やかな化粧を施している。自分もそれと揃いの姿をしていると考えると、なんだか妙に居心地悪い。

天井から灯篭(とうろう)が下がり、赤い房飾(ふさかざ)りが揺れている。
赤い毛氈(もうせん)の敷き詰められた床に、獣の毛皮が幾重(いくえ)に重ねられ、そこに今宵の客が座していた。
五人ほど横一列に並んでいる、思ったよりも年若い。

宮廷につかえる高官だという。
紹介は李白(リハク)らしい。
李白といえば、猫猫(マオマオ)の里帰りを手伝った武官である。

『(もっと早く紹介してくれたら良かったのに)』

そんなくだらないことを考えながら空いた杯に酒をついで回る。
表情筋に笑みを固定させると、空いた器にゆっくり酒をそそいでいく。
皆、林杏たちの詩歌や踊りに夢中であり、こっちをみないので楽だった。
そんな中一人ずぅんと暗い空気を醸し出している高官がいた。

『(…絢爛豪華(けんらんごうか)な宴中だってのに…暗っ!どこにでも不景気な奴はいるんだな)失礼します』

「ひとりにしてくれ……」

『(なんだよ辛気臭い…………ん?)』

どこかで聞いたことがあるような。考えると同時に手が動いていた。無礼とか、失礼だとか頭から抜けていた。うつむく男の額に触れぬよう、そっと前髪を上げた。

麗しいおもてがあらわになる。
いじけた顔が、一瞬で驚きに変わる。

『…じ、壬氏さま?』

154.短期労働中→←152.憶測



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (138 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
850人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

佐倉(プロフ) - しずくさん» ありがとうございます…!!モチベいただきました!!‬т т (2月23日 22時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - 最近薬屋のひとりごとハマったのでとても更新楽しみですー!頑張ってくださいー!!! (2月19日 4時) (レス) @page17 id: 4b943a174f (このIDを非表示/違反報告)
佐倉(プロフ) - マラカスさん» 教えて下さりありがとうございます。すみません。 (12月21日 18時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
マラカス(プロフ) - オリジナル作品ついてます (12月21日 15時) (レス) @page7 id: 66680d8fcb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:佐倉 | 作成日時:2023年12月21日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。