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166.白檀 ページ18

「何か盗まれでも?」

「考えようによっては物が減ってる方が良かったかもねえ……」

水蓮の意味深な発言にAと猫猫は仲良く首を傾げてみせる。

「増えてたのよ、人毛で編まれた下着が─」

発せられた言葉に二人は揃って背筋を凍らせた。考えただけで悪寒が走る。

『(壬氏さま…もうお面でもつけて生きていけばいいのに…………)』



*



「やっぱりおやじがいた後宮に比べるといい薬草は少ないな」

Aの横で猫猫がぽつんと呟いた。Aと猫猫は外廷の西側の捜索をし終えたばかりだった。

『だけどいくつか埋めてあるね』

「ああ…なんでだろうな?」

『(…あと捜索してないのは東側だけど…たしか軍部があるんだっけ。武官がいる中で仲良く二人で薬草探しってのも怒られそうだな)』

そう思い、Aは猫猫へと顔を向けた。

『猫猫、東側の探索は………』

「いかない。」

あまりの冷たい言葉にAは息を呑んだ。俯いた顔が逆光でイマイチ見えない。少なくとも良い顔はしていないということが感覚で分かった。

『そ、そう…。分かった』

「(…軍部にはあれが─)」

そのとき、猫猫の返事を聞き、立ち上がったAの頭にゴンッと大きな拳がふりおろされた。

『いっっ……!』

「…ここで何をしているの?」

『(…あれ、見覚えのある……あ、あの時一人だけ冷静だった─)』

いつしかAを問い詰めた女官だった。身長が高く、Aはやはり見上げる形になってしまう。

「ここから先はあなたの立ち入る場所じゃないはずです」

『(…だったら殴る前に言って欲しいんだが…。にしても美人だな)』

これで化粧が上手ければ。もっと口紅を厚くひき、眉を薄め柔らかくすれば妃の一人として召し上げられてもおかしくない美人だ。

返事をしない猫猫やAに呆れたのか女官ははあ。とため息をつきスタスタと歩き始めた。

『…ん?(白檀(びゃくだん)と……なんだろう?ちょっと苦いような香り……。それに彼女…軍部側からきた。軍部付きの女官なのか……?…まあ、いいか)』

遠くなる背中を見ながらAは目を細めていた。

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佐倉(プロフ) - しずくさん» ありがとうございます…!!モチベいただきました!!‬т т (2月23日 22時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - 最近薬屋のひとりごとハマったのでとても更新楽しみですー!頑張ってくださいー!!! (2月19日 4時) (レス) @page17 id: 4b943a174f (このIDを非表示/違反報告)
佐倉(プロフ) - マラカスさん» 教えて下さりありがとうございます。すみません。 (12月21日 18時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
マラカス(プロフ) - オリジナル作品ついてます (12月21日 15時) (レス) @page7 id: 66680d8fcb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:佐倉 | 作成日時:2023年12月21日 7時

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