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162.落ちた ページ14

「それで……なぜどちらも落ちる?」

花街を出て後宮へと戻ってきたAだったが、一度解雇にした手前、同じ所へすぐの復帰は難しいと告られた。

そのためAほどの頭を持った者には簡単とも言える試験を受けた訳なのだが……

見事に落ちてしまったわけである。

「お前なら字も書けるし、官女(かんじょ)の試験くらい訳ないと思っていたんだが…事前に勉強できるよう本も渡しておいただろ?」

『(…毒や薬の類なら覚えられても他はさっぱりなんだよなあ……興味がなくて)…ん?壬氏さま、先程どちらも、とおっしゃいましたか?』

「ああ。なぜどちらも落ちる?」

『どちらも?』

「ああ。どちらもだ」

はて。と首を傾げるAに戸のそばから声が聞こえた。背中から聞こえた懐かしい声にAは即座に振り返る。

「こういうことだ」

『ま、っ…えぇ?ま、猫猫……!?』

つまり、壬氏のいうどちらも。とは猫猫とAのことだったのである。



*



Aたちの仕事は、後宮下女となんら変わらない。頼まれた部署の掃除を行い、たまに雑用を頼まれるくらいだ。本来なら、もっと文官に似た仕事も任されるのが宮廷官女である。まあその資格というのも試験に落ちた猫猫とAには与えられなかった。

『(…案外汚れてるな)』

Aはきゅっきゅと窓を丁寧に拭く。
宮廷の官女たちは、資格を有してこの場所に来ている。後宮の寄せ集めの女官たちとは大違いだ。家柄と教養(きょうよう)があり、それだけの自尊心(じそんしん)を持ち合わせている。下女の真似事をするなど、あってはならぬことだと思っているのだろう。たとえ(ほこり)が溜まっていても掃くこともない。

『(まあ、それは仕事じゃないですしね)』

官女は書記官(しょきかん)のようなものだ。たしかに、掃除は仕事には含まれない。する必要はない。だからとて、しなくていいということでもない。官奴婢(かんぬひ)は、先の皇帝以来廃止されているので、雑用は個人で行うのだ。なので、高官の多くは掃除専用の下女も雇い入れている。今のAや猫猫も同じく壬氏の直属となっている。

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佐倉(プロフ) - しずくさん» ありがとうございます…!!モチベいただきました!!‬т т (2月23日 22時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - 最近薬屋のひとりごとハマったのでとても更新楽しみですー!頑張ってくださいー!!! (2月19日 4時) (レス) @page17 id: 4b943a174f (このIDを非表示/違反報告)
佐倉(プロフ) - マラカスさん» 教えて下さりありがとうございます。すみません。 (12月21日 18時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
マラカス(プロフ) - オリジナル作品ついてます (12月21日 15時) (レス) @page7 id: 66680d8fcb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:佐倉 | 作成日時:2023年12月21日 7時

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