161.寂しさ ページ13
「なんだい、ずいぶん久しぶりだねえ。もう子どもじゃないんじゃなかったのかい?」
『まあ、寒いし』
少し視線を気まずそうにずらすA。持ってきた布団は、爺とお袋の寝床の間に移動した。たしか、十を過ぎた頃には一人で眠るようになっていた。一体、何年ぶりだろうか。
Aは、貰った上等の衣を爺とお袋、そして自分の布団の間にかけると、ゆっくり目を瞑った。背中を丸めて胎児のように横になる。
「また寂しくなるねえ」
おっとりとした口調のまま言うお袋の言葉に、
『今度は
Aはそっけなく返した。
だが、その背中はお袋の腕に、腕は爺に触れていて、ほんのりと温かかった。
「そうだね、いつでも帰っておいで」
Aの頭をしわがれた手が撫でた。爺のその性格は周りから言わせたら母親のようであるという。
Aには、母親はいない。でも、優しい爺はいるし、おっとりしたお袋もいる。うるさい婆もいるし、にぎやかな小姐もたくさんいる。
『(いつでも帰ってこれるからさ)』
そうは思っていてもやはり物寂しいものはある。Aは髪を撫で続ける枯木のような手の温かみを感じながら、寝息をたてはじめた。
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佐倉(プロフ) - しずくさん» ありがとうございます…!!モチベいただきました!!т т (2月23日 22時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく(プロフ) - 最近薬屋のひとりごとハマったのでとても更新楽しみですー!頑張ってくださいー!!! (2月19日 4時) (レス) @page17 id: 4b943a174f (このIDを非表示/違反報告)
佐倉(プロフ) - マラカスさん» 教えて下さりありがとうございます。すみません。 (12月21日 18時) (レス) id: b1ac26aba9 (このIDを非表示/違反報告)
マラカス(プロフ) - オリジナル作品ついてます (12月21日 15時) (レス) @page7 id: 66680d8fcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐倉 | 作成日時:2023年12月21日 7時