✍ ばくだん ページ7
▶
〔 ばくだん ⇨ エーミール 〕
目の前で絶望に浸った感傷的な表情をする彼女を見て、私は何も言えなかった。ただ、黙ってズボンのポケットからハンカチを取り出し、彼女の手に握らせる。だが、それを握り返す力は彼女に残っていなくて、虫の息のまま小さく涙を流していた。
何が起きているか、全て知っている。でも、それを誰かに話すのは遮られた。これは、私と彼女のふたりの秘密にしておいた方が良いと判断し、この場を去るかも迷ったが、ひとりにしたら消えてしまいそうな儚さを醸し出していたので、何も出来ない癖に隣に居た。泣き止む迄、側に居ようと思った。
彼女からSOSが届いたのは、もう随分と遅い時間。普段、業務的な連絡しかしないメッセージアプリに、彼女からの連絡の通知が来た時、驚いて湯船から立ち上がり貧血気味になった。内容を何度も読み返したが、家に居ても解決出来ない事を悟り、お風呂から上がったばかりなのに家を飛び出した。
Aエーミール君、突然ごめん。助けて欲しい。
不穏なメッセージ。こんなメッセージ、今迄来た事がない。何処に居るのか聞く前に体が動いてしまっていたので、取り敢えず彼女の家の方に向かって走りながら、彼女に電話を掛けた。何回も不在着信になったが、諦めずに掛け続ける。すると、数え切れない位掛けた後に、やっと繋がった。
「 あ、Aさん！今、何処に…… 」
「 エーミール君、ごめんね。 」
電話が切れてしまった。彼女が切ったのだ。相変わらず、何の情報も得られなかった。何処に居るのか、何をしているのか、どうして私に助けを求めて来たのか。
エーミール何があったんですか?今から向かうから、連絡下さい。
メッセージを送って暫く、彼女の家の方にまた走った。すると、バイブが鳴ったので、確認した。
A神社に居る。何時もの。ふたりでお参りした神社。真っ暗で多分、もう誰も居ない。
その文章に違和感を感じた。何か変だ。だが、そんなの気にしている暇はない。神社は彼処しかない。そこを目掛けて走った。足がプルプルしているが、構わず走った。
そして、最初のシーンに戻る。何が起きているかは分かった。彼女がどんな目に遭ったかも、全部。呼吸が落ち着いた彼女は、その細い目をゆっくりと開き、私を探す様に視線を動かした。小さな視界に映り込む様に、私は彼女の目線に合わせる。
▶
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗枝(プロフ) - 燐乃さん» コメント有難う御座います！嬉しいお言葉、本当に感激です。リクエスト、有難う御座います🥲 了解致しました。お時間が掛かってしまうかもしれませんが、書かせて頂きます😊 (6月8日 21時) (
レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
燐乃(プロフ) - 紗枝さんの書く夢小説、いつも楽しく読んでいます。巧妙なストーリー、綺麗な描写が大好きです。リクエストなのですが、学パロでshaさん(もしくはtnさん)にひたすら嫌われる話を見てみたいです。夢小説と言えるかわかりませんが、ご検討よろしくお願いします💞 (6月8日 20時) (レス) id: 8dc2c8aa68 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - ちびさん» ちびさん、前にもコメント下さったのに、今回もコメント有難う御座います！リクエストもとても嬉しいです😳💗 了解致しました。時間が掛かってしまうかもしれないのですが、頑張らせて頂きます☺ (6月8日 13時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ちび - とてもストーリー、文字の使い方が繊細でだいすきです。リクエストなのですがshpで学パロ主さんの書く純愛が見てみたいです。 (6月8日 7時) (レス) @page38 id: 3cdb4a4830 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
