✍ ふぁーすと・きす ページ6
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〔 ふぁーすと・きす ⇨ ロボロ 〕
目に掛かりそうな長さの前髪を、ロボロ君は細い指で弄る。まるで、切ろうか迷っているみたいだった。
「 振られたの? 」
8月の教室。冷房で掻き消す灼熱。もう、外には出たくない。帰りが億劫だ。自分の机じゃないけど、机の上に座った。
今日、私とロボロ君は高校のオープンキャンパスの支援員として、夏休みなのにも関わらず登校しているのだ。
「 分かってたけどね。 」
「 強がるじゃん。 」
「 強がらせてや、泣いちゃうから。 」
乾いた笑い声を含んでいる声音とは似合わない真顔。先程からずっと、同じ所を見詰めている。
「 まあ、頑張ったじゃん?私、そう言うの詳しくないけど、辛かったでしょ。 」
ロボロ君は私を見上げる。女の子みたいな顔。白い肌。綺麗な二重。華奢な体も含めて、私より可愛い。だから、男の子から人気だろうとは思ってた。
「 夏休み明け、学校来なくなってたら察して。 」
「 ロボロ君が来ないなら私も来るの止めようかな。詰まんないし、面白くないし、暑いし。 」
「 夏なんて直ぐに終わるやろ。 」
風鈴が揺れた。繊細な音がする。冷たいサイダーが飲みたい。カラオケにでもロボロ君を誘おうかと思ったけど、また面倒臭い噂が立っても嫌だ。この世界は窮屈だ。制服のコスプレにも飽きた。
男女の友情が成立しないと言うのなら、私達は一体何なんだろう。
「 あのさ、恋愛で世界って成り立ってないから。もっと、大事な物があるかもしれないでしょ。だから……泣かないでよ。 」
励ましたつもりの言葉。静かに泣くロボロ君を見たら、弱々しくなってしまった。偶々持って来ていたハンカチを渡す。ロボロ君は躊躇いながら受け取った。結局、私達って何の為に生きてるんだろう。
「 Aは好きな人とか居るの? 」
名前順の関係でロボロ君とは掃除当番が一緒になる事が多かった。放課後、塵取りで塵を集めていた時、箒で廊下を掃いていたロボロ君は言う。これは確か、1年生の7月の話。
「 居ない。恋愛に興味無い。私、そう言うの苦手なんだ。ロボロ君はどうなの? 」
「 うーん、恋愛の線引きってムズない? 」
「 何か分かるかも。普通に憧れと恋愛って混ざるよね。私も別に、そう言う経験が多い訳じゃないんだけど、分かる。 」
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紗枝(プロフ) - ちびさん» こんばんわ。温かいコメント有難う御座います。本当に嬉しいです☺ " はくしき "とても思い入れのある作品です。そんな風に言って下さって、光栄に思います。これからも度々、覗きに来てくれると嬉しいです💐 (5月30日 3時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ちび - この短編集から貴方様の事を知りました。とても文が好きで文字の使い方が好きです。とくに「はくしき」が何か胸にもやっとくるような不思議な気持ちになりましたとても好きです😢✨これからも応援してます。 (5月29日 21時) (レス) id: b1c4d4a663 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - 大神さん» こんばんわ。通知に紛れてしまい、反応が遅くなってしまいました。申し訳御座いません。お優しい言葉、言葉にならないくらい嬉しいです😊 これからも見守って下さると嬉しいです🥰🥰 (5月21日 22時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
大神(プロフ) - zmさんの小説を読んでから全ての作品を読ませて頂きました。どの作品も心に刺さりましたが、この短編集が特に好きです。こんなに自分好みの小説を書かれる方に初めて出会い、言葉にならないくらい好きです。これから応援しております。 (5月20日 12時) (レス) @page37 id: 48f5acd833 (このIDを非表示/違反報告)
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