4 : 兄 ページ4
…
ロボロさんは、空っぽの瞳で何処かを見詰めていた。その沈黙が、自分が誤った事を言ってしまったのではないかと不安になってしまう。だが、このチャンスを逃せば、私は兄の死の真相を知る事は出来ないまま、この世から居なくなるだろう。それだけは嫌だった。
暫くして、ロボロさんはしっかりと私を見る。私の中に居る兄ではなく、私を見た。
「 唯人の高校の卒業アルバムって、買った？ 」
「 ……買ったと思います。だけど、実家にあるので、私の手元にはありません。 」
「 俺、車で来たんよ。家に高校の卒業アルバムがあるから、見に来る？寒いし。 」
まさか、お家にお誘いされるとは思っていなかった。大学生になって、異性とは警戒心を強目で接する様になったけれど、ここまで歳が離れていれば別に大丈夫だろう。
私が力強く頷くと、ロボロさんはもう一度聳え立つ廃ホテルを見て、歩き出した。車を近くに停めてあるのだろう。私はロボロさんの背中を追い掛ける。
兄が生きていたら、31歳。どんな人生を歩んでいたのか、考えてしまう。世間一般的には、家庭があっても可笑しくない年齢だ。もしかしたら、子供も居たかもしれない。兄の歩む未来を、見ていたかった気持ちがある。
暫く歩くと、ホンダのヴェゼルがあった。これが恐らく、ロボロさんの車なのだろう。ロボロさんは車の鍵を開けると、後部座席の扉を開けてくれた。私は駆け足でヴェゼルまで向かい、後部座席に乗せて貰う。
ロボロさんが運転席に座り、エンジンを掛けた。車内は凍ってしまう程、寒くて私はマフラーを鼻の下まで持って来る。
「 大体、1時間30分位かな。相生市の方に住んでるから、結構掛かるで。まあ、のんびりしてって下さいな。 」
ロボロさんが暖房を付けてくれたので、暖かい風が後部座席にも届く様になった。
「 相生市の方に住まれてるんですね。 」
「 そうなんよ。神戸市の方にはあまり来ないから、買い物でもして行こうかと思っててん。 」
「 すいません、お邪魔する事になって。宜しくお願いします。 」
「 いや、全然ええんやで。俺もAちゃんの事、気になってたから。 」
「 私の事ですか？ 」
車がゆっくりと動き出し、真冬の景色が少しづつ動き出す。朝早くに起きた所為で、暖房の影響もあり、眠くなって来てしまった。だが、人に運転して頂いている車で、眠るなんて失礼に当たる。必死になって目を開けた。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗枝(プロフ) - 猫さん» こんばんわ。コメント有難う御座います！結構、衝撃的なタイトルですよね。でも、タイトルで興味を持って頂けて、光栄です☺︎ 愛し合っているのに、否定される程、悲しい事はありません。天国で、幸せに暮らして欲しいな〜と思っています😆 (11月17日 17時) (
レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - コメント失礼します、題名に興味を惹かれ作品を読ませていただきましたピンク色が好きな彼、普通の人だったらと言うような母の発言、もしかして、、、と思いながら読み進めていき、やっぱり、、と胸が痛くなりました、最後の展開に最後のセリフに心がギュッとなりました (11月17日 13時) (レス) @page27 id: 41566ecef6 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - 子羊さん» こんにちわ。コメント有難う御座います！子羊さん、色んな作品にコメント下さり光栄です😭 最後の台詞はとても悩みましたが、殺人？それとも……と言った所に特定的な言葉を使いたくて、これにしました。次回作も是非、楽しんで頂けると幸いです🙏 (9月10日 13時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
子羊(プロフ) - あにの葬式、完結おめでとうございます！最後の夢主さんのセリフが特に好きで、もう何回も読み直しています。次回作も楽しみにしています！ (9月10日 5時) (レス) @page28 id: d689fcbe75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
