3 : 兄 ページ3
…
兄が廃墟好きであった事を、初めて知った。この廃ホテルを選んだ理由が分からなかったが、兄が好きな廃墟だったからなのかもしれない。
兄が死んでも尚、兄の事を知れるなんて。ロボロさんは、兄が死んだ理由を知っているかもしれない。今迄、封印していた好奇心が動いた瞬間だった。
「 Aちゃん、唯人に似て来たね。目の感じが、唯人にそっくり。 」
「 そうですか？兄は母似で、私は父似なのであまり似てるって言われた事、無いんですけど……。でも、嬉しいです。兄と似てるって言われるの。 」
ロボロさんは、私を見て切なそうに微笑んだ。確かにその瞳は私を見ているのだが、私の中にある兄の存在を見ている様な気がして、兄の事を大事に思ってくれていたのが伝わる。胸が熱くなった。
「 Aちゃん、今幾つ？ 」
「 21歳の大学3年生です。 」
「 あの時は、まだ、小学生やったのにな。時間の流れは早いんやな。 」
「 兄が死んでから、13年が経ちました。廃ホテルも変わっていくし、街並みも変化し続けています。兄が死んだ事を忘れてしまっている人が多い中、こうして兄に会いに来て下さるのは、とても嬉しいです。寒い中、有難う御座いました。 」
私がお辞儀をすると、ロボロさんは首を横に振った。墓参りにも定期的に来てくれている事は母から教えて貰っていたが、兄の死んだ場所まで来てくれるなんて、兄とは随分、仲が良かったのだろう。兄が生きていた時代に、兄の事を大切に思ってくれていた人と接するのは、私にも良い刺激になった。
「 ロボロさん、この後、ご予定は？ 」
「 日曜日やから、休日やし、買い物でもしてから帰ろうかと思ってたで。Aちゃんは？ 」
「 私は帰ろうと思ってました。ロボロさんが良ければ、少しお食事でも如何ですか？少し、聞きたい事があるんです。 」
「 勿論、ええけど、聞きたい事って何？ 」
「 兄が死んだ理由を、知りたいんです。兄は、遺書を遺してくれたのですが、父は私が読む前に処分してしまいました。両親に幾ら聞いても、答えてくれないんです。自分で調べようかとも思ったけど、兄のプライベートなことを掘り起こすのは、許される事なのか迷ってしまって、今迄、何も出来ずに居ました。だけど、ロボロさんなら私の知らない兄を知っている気がします。だから、教えて頂きたいんです。どうして、兄は死んだんですか？ 」
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗枝(プロフ) - 猫さん» こんばんわ。コメント有難う御座います！結構、衝撃的なタイトルですよね。でも、タイトルで興味を持って頂けて、光栄です☺︎ 愛し合っているのに、否定される程、悲しい事はありません。天国で、幸せに暮らして欲しいな〜と思っています😆 (11月17日 17時) (
レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - コメント失礼します、題名に興味を惹かれ作品を読ませていただきましたピンク色が好きな彼、普通の人だったらと言うような母の発言、もしかして、、、と思いながら読み進めていき、やっぱり、、と胸が痛くなりました、最後の展開に最後のセリフに心がギュッとなりました (11月17日 13時) (レス) @page27 id: 41566ecef6 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - 子羊さん» こんにちわ。コメント有難う御座います！子羊さん、色んな作品にコメント下さり光栄です😭 最後の台詞はとても悩みましたが、殺人？それとも……と言った所に特定的な言葉を使いたくて、これにしました。次回作も是非、楽しんで頂けると幸いです🙏 (9月10日 13時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
子羊(プロフ) - あにの葬式、完結おめでとうございます！最後の夢主さんのセリフが特に好きで、もう何回も読み直しています。次回作も楽しみにしています！ (9月10日 5時) (レス) @page28 id: d689fcbe75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
