【 wrwrd! 】あにの葬式【 rbr 】

2 : 兄 ページ2

…


　互いの顔が視認出来る距離になって、随分と昔に見て以来、すっかり忘れていた彼の事を思い出す。彼は、あにの葬式で、兄と自分のクラスメイトの事を、殴り飛ばした人物だ。そして、少しだけ問題になった。
　彼は暫くの間、私を見て動揺していた。私も、久し振りにあった彼に動揺していて、上手く話せない。気まずい時間がふたりの間に流れた後、彼は漸く口を開いた。
　
　
　「 唯人( ゆいと )の妹さんの…… 」
　「 小笹( こささ )Aです。あにの葬式に来て下さいましたよね。確か、兄と同じクラスだった…… 」
　「 そうです。ロボロです。唯人に、ロボロって呼ばれてました。久し振りに、ロボロって言われました。懐かしい名前です。 」
　
　
　彼の左手にも花束が握られていて、兄の事を追悼しに来た事は明白だ。私は、彼の花束にもピンク色の花がある事が見て取れて、兄の事を良く知っていたのだと嬉しくなった。
　今の時代、男性がピンク色を好きでも変では無い。幼女アニメを観ていても、可笑しくない。だが、兄の生きていた時代は、男性がピンク色を好む事も、幼女アニメに精通している事も、気持ちが悪いと言われてしまった。
　兄がピンク色を好む理由は、私がピンク色が好きだからだ。兄が幼女アニメに精通しているのは、私と一緒に観ていたからだ。理由を話せば分かってくれる筈なのに、理由を話す前に拒絶される。そう考えると、良い時代になったと思った。
　
　
　「 久し振りに来たんやけど、随分とボロボロになってるんやね。 」
　「 兄が死んでから、心霊スポット扱いをされる様になって、肝試し目的の不法侵入者が増えたみたいです。落書きも結構されてるみたいだし、窓も割られてて……。だから、最近になって立ち入り禁止のテープが貼られる様になりました。昔は、廃ホテルでも綺麗な方だったんですけどね。 」
　「 営業したのが1929年やって、聞いたかな。第二次世界大戦で営業停止になって、1961年に営業を再開した気がする。でも、1967年に水害が原因で営業停止してるんよ。 」
　「 そんなに古くからあるんですね。ロボロさん、確か兵庫県は地元じゃないですよね？詳しいんですね。 」
　「 唯人が、話してくれてたんよ。唯人、無類の廃墟好きやったから。俺もその影響で、少しだけ勉強した事がある。 」


　ロボロさんは、私の花束の隣に持参した花束を置いた。そして、手を合わせて黙祷をする。
　
　
　…

3 : 兄→←1 : 兄

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す