僕の気持ち ページ22
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貴「…た、田中は体力がある。元気もあって、力もある…それが田中の長所。」
田「お、おう…?」
いきなり田中の長所を言った僕に、田中は不機嫌そうな顔を崩し、少しだけ驚いたような顔をした。
こんなことを言ったら怒られるだろうが、少し間抜けだ。
貴「でも、田中は少し真っ直ぐ過ぎる。フェイントに引っかかるし、すぐ力だけで押し切ろうとする…それが短所。」
田「…つまり…なんだ???」
ますますわけがわからない、と顔に書きながら頭を捻る田中。
貴「…僕は、田中じゃない。ここにいる人たちだってみんな田中じゃないから…。だから、他に人にもそれぞれ、長所と短所がある。それは、僕も同じ。」
…少し難しいかもしれない。というか僕自身も言葉にするのが難しい。だいぶ回りくどい言い方をしてしまった。
バレーボールを見ていた視線を、田中へ移す。
いつの間にか周りは静かになっていて、注目されていることに気がつく。
でも田中は、そんなこと一切気にしていないようだ。真っ直ぐとこっちを見てくる瞳の中には、僕しか映っていなかった。
真正面から来るやつは正直少し怖い。何を考えているのかは分かり易いけど、それが自分に、自分だけに向けられている感情だと思うと少し怖くなる。
…西谷も、最初見た時は少し怖かった。
いきなり話しかけられて、振り返れば、きらきらと真っ直ぐな目。
期待や希望、その他諸々の感情が入り混じっていて、そんな感情が僕に向けられていると思うと「僕はそんなに大した人間じゃないから、そんなに期待のこもった目で見ないでくれ」といつも思っていた。
…まぁ、何度か大会に出るうちに、少しだけ慣れたと思うけど。
今の田中の目は、あの時の西谷の目に似ている。
言葉が足りない、なんて言われる事もさらにあってよく誤解されたりもした。その度に言葉が足りないのを直そうともした。
でも聞いても、主語が足りない、修飾語が足りないって、いつも抽象的な言い方ばかり。直そうにもわからない。
その時その時で、チームメイトがうまくフォローしてくれた。でもあの時のチームメイトは今は西谷しかいないし、僕ももう甘えていられない状況だ。
…わかって欲しい、田中。
貴「____僕には僕なりの、考えがあるんだ。」
これは、僕にとっての、最大の関与だ。
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雨智よゐ(プロフ) - ゆきとさん» コメントありがとうございます、そう言っていただけると嬉しいです!! (2022年1月18日 22時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきと - 西谷 カッコイイ✨ (2021年12月13日 18時) (レス) id: fa3fd2ad4b (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - 猫築かなめさん» そう言っていただき、嬉しい限りです!応援ありがとうございます!! (2021年2月5日 19時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - 無気力もどきさん» ありがとうございます!その言葉が、とても嬉しいです!続編を近々公開致しますので、もうしばらくお待ちください…。 (2021年2月5日 19時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
猫築かなめ - 面白いです!これからも頑張ってください! (2021年2月5日 18時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨智よゐ | 作成日時:2021年1月10日 11時