キミが好き 2 ー Hayato.K ー

ep.6 ー 隼 side ー ページ20

ー 隼 side ー


何だったんだ、今の…

Aとの会話を終了した後

呆然と立ち尽くす。


幻聴か？

何で、急に？

欲求不満過ぎて、俺口に出してたのかな？


そうだよ。

俺だって健全な男の子だもん。

そりゃ、普通に好きな子とキスしたいと思うし

実際にアクションも起こそうとしてたからね！


こないだだって

俺んちで一緒にソファに座って、恋愛物の映画を観てた時。

ちょっとしたキスシーンで
なんとなあく、意識して

今いけるかなあっていい雰囲気を狙ったんだけど

変な空気が流れただけで、何も出来ず…


ラストシーンでAが感動して涙して、エンドロールの後も余韻に浸ったまま


今度こそチャンス！って。


伸びをする振りをして

Aの後ろ側のソファの背もたれに腕を伸ばしてさ。


前かがみになっているAが、このまま後ろにもたれたら…

肩とか抱いちゃう？


ドキドキしながらそのタイミングを待ってたのに。



『良かったよねー』

同意を求めるAが俺の方に顔を向けて

結構近い距離で目が合う。


これは…いける、かも？なんて

心臓がドキドキからバクバクしてきて


視線を逸らさないように

じっと、そのまま見つめて…


このままいい雰囲気にと思っていたら



『何で隼そんな無表情なの？』


きょとんとして

ぱちぱちと瞬きを繰り返すA。



『面白くなかった？』

「……」


そんな無垢な瞳で見られて

キスに持っていける程…


俺、経験豊富じゃないから！


しかも

キスする時のこの真剣な表情を…


“無表情”って！！



そりゃ緊張した時とか真剣な時とか

表情がなくなるとは言われた事もあるけど。


ダメだ。

見つめるだけじゃAは気づかない。



『どうしたの？』

黙っている俺を不思議そうに覗きこむから


伏し目がちにAの唇に視線を落として

ゆっくりと顔を近づけてみる。




『眠い？』

「……」

『目がとろんとしてる』

いや、そういう目じゃないから！


俺の心の叫びは届かず

疲れてそうだから帰るねと、立ち上がるA。


ああ、今日も失敗…

そんな涙をのんだ日が、とうとう明日報われる。


勇気いっただろうなあ、言うの。

またAに言わせちゃったな。


自分の情けなさと同時に

同じ気持ちだった嬉しさも込み上げてきて


空にはまん丸の月。


今すぐ、会いたいな…


胸がきゅうっと音を立てた。

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