actors' 9

ただ、愛されたいだけだった。 ページ35

家に帰るのが憂鬱だ。







そんな思いを抱えている中学生が何人いるだろう。








私のクラス、30人中だったら多分片手に収まる程度。







ただ、その理由はおおよそ中学生特有の反抗期から来る、







親が色々口出してくるのがうざい！という感情からだろう。









それはいつか、思春期を終えれば消えてしまう。









では、そうじゃない中学生は何人いるのだろうか。








少なくとも私のクラスには私以外にそのような







感情を持っている人はいないだろう。








最も、本人が上手く感情を隠している場合も考えられるが、







同類が身近にいたらすぐに気づきそうなものだ。








そんなことを考えていたら、もう自宅に着いてしまった。








学校から徒歩７分。学区というものを恨めしく思うが、









私一人の力でどうこうできるものでもないから、








距離の近い中学に行くという合理的な規則に








閉口するしかなくなる。








宮脇「ただいまぁ。」








玄関の扉を開いて、足元を見ると








綺麗に磨かれた一足の革靴があり、はっとする。







息を整えてリビングへつながる扉を開ける。








宮脇「ただいま帰りました。」









橋本「遅かったな。」











宮脇「遅くなってしまい申し訳ありません。












放課後少し、先生に頼まれ事をされていて。」











橋本「頼まれ事ならばしょうがない。










先生もお前に頼むと言うことは期待しているということだろう。










そのまま高槻家の名に恥じぬような振る舞いを続けなさい。」









宮脇「はい、承知いたしました。」











橋本「私はもう仕事に戻る。」










宮脇「いってらっしゃいませ。」














ソファにどっかりと座っていた父が重そうな腰を上げると、











父の仕事用鞄を持った母が父の部屋から出てきた。










木村「どうか、気をつけていってらっしゃいませ。」










橋本「ああ。行ってくる。」













恭しくお辞儀をした母を一瞥すると、










父は母から鞄を奪い取って玄関へと向かっていった。












玄関のドアがガチャリと閉まる音がすると、










緊張の糸が切れたかのようにへなへなと母が座り込んだ。












宮脇「大丈夫？殴られたりしなかった？」

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