知り合い(仮) . (ページ9)

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「さっきは急にすいません。」

今日は多分あまり飲んでないんだろう。

顔も赤くないし、気持ち悪そうな感じもしない。

『いえ、こちらこそ。』

「あの、簡潔に言うと、僕も昔同じアパートに住んでました。しかもAさんの上の階に。」

確かに、私より少し上の男の子の記憶は少しだけある。

でもそれが宮近さんかどうかなんて覚えてない。

『すいません、私全く覚えてなくて。』

「実は僕もあまり覚えてないんです(笑)

　こないだ、マネージャーさんが僕のポケットにAさんの名前が書いてある紙を忍ばせてくれてて、」

『あ、それ松倉さんが言ってました』

「それを見たうちの母が、え、Aちゃんだって言って。」

はい。と渡された写真には

確かに小さい頃の私が映っていた。

「これが僕です。隣は兄です。」

『ほんとだ。面影ありますね。』

「よく言われます(笑)

　だから少しだけ期待してたんです。覚えててくれてたりしないかなって。」

『すいません。全く覚えてなくて、』

「そうですよね、こちらこそすいません。

　この写真よかったら記念に(笑)」

いらなかったら捨ててください。

そう言われたけど、きっとファンの子なら見たいもので

『宮近さんのプライバシーは大切にしますよ。

　お互い覚えてなくても知り合いだったなら余計。』

私がそう言うと

「じゃー俺とAさんは、知り合い(仮)って事で(笑)」

宮近さんは初めて素の表情で笑った。

「いつか(仮)が取れるように頑張ります(笑)」

アイドルという職業はほんとに罪だ。