４８ｰ３.巻き込まれ系男子と落ち着く頃に ページ7
「草凪さ……」
「おはよーA！ なにやってんの？」
「おはよ。ただのお話だよ〜」
そのままお喋りを続けてAを連れ去ってしまいそうなクラスメイトに、ツナはあ、あ、と小さな声を上げるが、そんなの彼女には知ったことでなく、草凪はどんどん離れていった。
後ろの廊下の窓から「バカツナ」と聞こえた気がして、がっくりと項垂れたツナにAが頭だけ肩越しに笑う。
「お昼に話そっか！」
……なんて気の利く子だ！
胡散臭いと普段思っているにも関わらず、Aの笑顔が天使の微笑みに見えたのは、まあ、現金な話だろう。
＊＊
だが、いざ昼に二人きりになれば、時間を置いたせいか、どうにも話が切り出しづらくなってしまったのはお察しだ。
ツナは弁当をつつきつつ、Aはパンをかじりつつ、中庭の隅で二人きりだ。
「……それで？ 話があるんだよねぇ？」
パンを先に平らげたAがにっこりとツナを見た。日に照らされる黒髪が眩しい。ぱしぱしと目を瞬かせ、ツナは弁当に目を逸らしつつ、意を決した。相手からきっかけを貰ったのならば、話さなければ、流石に無礼だと分かっていた。
「昨日、他のファミリーから、草凪さん、は……そのファミリーの傘下にいるって言われて、だから……」
なんて言っていたかうんうんと思い出していると、その間に検討をつけたらしいAがツナの顔を除きこんだ。笑顔が笑顔でなく、口端がただ、吊り上げられているような気がした。
「そのファミリーの名前は？」
「えっと、」
去り際に言われたファミリーの名前を、たどたどしくツナが口にすると。
「……あそこか……」
まさか関りがあるわけないよねえ、と誤魔化し気味に笑いかけようとしたツナの中途半端に開いた口からは、「嘘でしょ！？」なんて言葉が漏れ出た。勿論Aに聞かれていて、Aは笑顔を保ち、ツナを落ち着かせるように、あの甘い声でなく、ワントーン低い声で話す。
「いや、でも、違うよ？ なんていうか〜、私の家系が抱えてる問題っていうかぁ……私には直接関係なんてないよ？ ねっ」
まだ話が読み取れないツナは、詰まりつつも、頷くしかなかった。
ただ、説明するAの笑顔に見え隠れする焦りが、「誤解を受けたくない」と言いたげに見えて、そこだけが希望だった。
自分達の知らない事実。
出来ることなら、ボスとして、受け止めたい。
……自分にとってそう重くない事案であれば。
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作者名：鈴鐘草 | 作成日時：2016年10月9日 1時
