５４ｰ２.未来の彼女と結婚期 ページ18
一体どうしたの。
女性──当の本人の草凪が声をかければ、ぴたりと口喧嘩は止んだ。代わりにばたばたと綱吉が慌てる。
｢くっ草凪さ、聞いて……！？｣
｢今しがた聞こえたところ。隠されると気になるから一から教えて欲しいな｣
拗れると面倒になることを知っていた草凪はすっぱりと言う。優しく微笑んでいても、綱吉を逃すつもりはなかった。綱吉は目を泳がせる。
言い争っていた相手のリボーンは、お前が喋れとばかりに睨む。
綱吉は、逡巡した後にため息を吐いて、白状した。
｢今取り引き中のファミリーが……草凪さんを向こうのボスの嫁にくれれば信用出来る、って……｣
いや、それは何処の戦国時代の話だ？
なんてことは学のない草凪には思いつかないが、大半の人間が思うことだろう。
草凪の頭の中で、なんとなく向こうが己の戦力を欲していることを察した。彼女は肉弾戦も可であるが、その上幻術もまあまあこなす。何より美しい見目で、女だ。強い女と言うのはこの業界においてある種のレアリティがついている。だからまあ、手に入れれば己の組織にも箔が付くだろう。それ以上に、ボンゴレ守護者なのだ。
だがしかし、裏切られるリスクを冒してまで己が欲しい、と言うファミリーには首を傾げた。
だって彼女は強いのだ。多分向こうのボスとやらに致命傷を食らわせることすら可能。だって強いから。よしんば武器を取り上げられても、彼女は己には効かない毒薬なんてものがある。そう、口に入れて敵に飲ませることだって可能だったのだ。
向こうは馬鹿なのだろうか。
それとも自分には思いつかない策でもあるのだろうか。
うんうん言っていると、綱吉は申し訳なさそうに言う。
｢リボーンがいいんじゃないか、って言うんだよ……でも、でも草凪さんは雲雀さんといつか結婚するだろ？ だから……｣
｢え？｣
｢え？｣
上から綱吉、草凪、綱吉である。
綱吉も草凪も目をまん丸にしていた。
｢結婚……するよね？｣
綱吉の引き気味な声に、草凪は思い切り首を傾げた。そして宣う。
｢……あの人に結婚なんて思考あるの？｣
そう言う草凪の指には確かに、匣用のリング以外の指輪が嵌っていないのである。
綱吉は思わず｢ひぇぇぇ……｣とか細い声を出した。そう、この人物がドン・ボンゴレなのだ。草凪は正直ちょっと十年来の友人を目の前にして、もしかしたら人違いかもしれない、なんて思っていた。
友人がボンゴレボスになったなんて、誤情報だったのでは。
５４ｰ３.未来の彼女と結婚期→←５４ｰ１.未来の彼女と結婚期
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鈴鐘草 | 作成日時：2016年10月9日 1時
