２０−２.風紀委員長と露の空 ページ49
黒い瞳。
ふわふわとカールした、だけど本当は真っ直ぐな黒髪。
自分よりも十数センチ小さな体。
猫の様な目に、笑う口許。
それは何も変わらないはずなのに、何故だか少女の存在を少年は遠くに感じた。
「サラって名前、知ってますか？」
まだ少年の方を見ずにいる少女の言葉に、少年は首をかしげた。
自分は詳しくはないが、この世にサラという名前の人間はごまんといるだろう。
有名人にいるかは知らないが、女性の名前だということしかわからない。
知っているには知っている、と答えれば、少女はくすくす笑った。
「私の、母親の名前なんです」
母親。
少年はその言葉に、ぴくりと反応した。
＿＿しかし。
少女がこれから何を言おうとしているのか皆目見当がつかない。
彼女は今まで両親の話はおろか、自分の出生も多くは語らず、父親もついこの間その手に掛けてしまっていたはずだ。
「私の母はイタリア人で、でも、名付け親は世界を放浪していた方なんです」
変な人ですよねー、と、笑う彼女の顔はまだ見えない。
少年は、よくわからずに近くの机に腰かけた。
未だ話の要領が掴めない。
少女はかちゃん、と、近くの窓の鍵で手遊びを始める。
「それでサラって、アジアのある地方では『お姫様』って意味なんだそうですよ」
素敵な名前だと思いませんか？
＿＿少女の細切れな意味を持つ言葉に、少年はまだ眉間に皺を寄せていた。
ふと少女は、くるりと向きを変えて少年の顔を見る。
「私、母親に生き写しなんです」
猫の様な大きな目を、月を背にして真っ直ぐにこちらに向けて。
「でも性格は似ても似つきませんでしたねえ。
母は、博愛主義で、優しくて、綺麗で、儚くて。
病弱だったので、いつも床に伏していました。」
その長い睫毛を伏せて語る少女に、少年は焦りを感じていた。
＿＿このままでは、何かが壊れると。
「本当に綺麗な人で、金色の髪なんて柔らかくて＿＿」
そこでふと、少年は疑問を持った。
「……触れられるの？」
そう、彼女の人アレルギー。
以前に酷く拒絶された経験のある少年からすれば、聞き捨てならない事柄だろう。
少女はくすくす笑いをもう一度して、可愛らしく脚を抱え込んだ。
「実の母ですから、ねー」
いつも通りの雰囲気にやっと戻った。
だというのに、少年は更に不機嫌になってしまった。
暗かった空が、ゆっくりと白み始める。
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鈴鐘草(プロフ) - レナさん» いえいえ！ 本当に嬉しいんですよー、自分が書いているものが好きだって言ってもらえるのは(＾▽＾＊) コメントを全くくれないと「つまらないのかなあ…」って不安にもなりますしねえ(笑) 本当にありがとうございます、よりよい小説を書くために精進していきます！ (2015年11月22日 23時) (
レス) id: a9e0db2ec6 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - そんな。大げさですよ！汗 (2015年11月20日 19時) (レス) id: 67d98e9ffd (このIDを非表示/違反報告)
鈴鐘草 - レナさん» わあああまた遅くなってしまいました！ 本当にそういう言葉は嬉しいです、これからも励みにさせていただきますね^^ (2015年11月20日 18時) (レス) id: 0572002cfd (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - 応援してます！ (2015年11月14日 11時) (レス) id: 67d98e9ffd (このIDを非表示/違反報告)
鈴鐘草 - レナさん» 初めまして！返信大変遅れました、すみません…。息抜きに来たのですが、コメントを下さった方がいたなんて…（感涙） ありがとうございます、大好きといって頂けて作者冥利に尽きます（´ω｀*）コメントありがとうございました、これからも頑張りますね…！ (2015年11月14日 0時) (レス) id: 0572002cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈴鐘草 | 作成日時：2015年6月7日 22時
