１７−２.お師匠様と商店街で ページ41
温かい甘栗の紙袋。
それをこれから食べる事を想像しながら、両者コンクリートの上を歩いていた。
Aは道を、風は塀の上を、だが。
ふわりと揺れる彼女のウェーブのかかった髪を見て、その表情を読み取る。
口許は相変わらず、笑みを浮かべていた。
その可愛らしい笑みに風は繊細な危うさを覚えて、つい声をかけてしまった。
「A」
「なに？」
ああ、やはり、と、風はため息をつきそうになる。
彼女の表情は、きっとどんな時でも、崩れないのだろうと。
風は声をかけたはいい物の何を言えばいいのか分からず、苦笑して口ごもった。
「その、ですね。……貴女の誕生日って、何時でしたっけ？」
その質問を受けた時の彼女の表情ときたら、風は珍しく吹き出してしまいそうになった。
先ほどこの表情が崩れる事はないだろうと思っていたが、前言撤回、怒りはしないものの驚きはどうも隠せない性格らしい。
「なーに？ 誕生日プレゼントでもくれるの？」
茶化すような態度に、なんとかやり過ごせたと風は内心息をついた。
「けどごめんね、覚えてないんだよね〜」
何だそれは。
驚きを通り越して風は呆れ、物も言えなくなる。
ただ、数秒してから、彼女の言った「覚えてない」は記憶力がないのではなく、自分が生まれたことに興味をもっていないのだろう。
そして、それを否定されない環境でそだったのだろうと。
少し暗くなった空を見て、風はまた息をついた。
「そうですか」
これ以上は何も言うまいと思ったが、ふと、虚を突かれるように彼女が一言言った。
「……冬だったかなぁ」
それさえも おぼろげで、言わなくてもいいのに、傷を抉るような真似なんて、自分の質問に答えるためにしなくていいのに。
風はそう思いつつも、彼女の好きにさせることにした。
「……うん、冬だ。
雪が降ってて、それで＿＿」
実家に帰ったんだっけ、と、風がいない空間で独りごちるようにして言った。
彼女の表情は、肝心な時に見えない。
まだ寒くもないのに、彼女の口からは白い息が漏れそうだった。
風はただただ、彼女の傍で歩いていた。
彼女を生涯愛してくれる人が現れるように。
いや、すぐに現れてくれればいいのに、と。
まだ星も見えていないのに、薄暗い空へと願った。
(というか、私ともばったり会った気が……)
(ん〜、そうだっけえ？)
(ああ、なるほど……)
(一緒にいるのを見られたくなかっただけか……)
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鈴鐘草(プロフ) - レナさん» いえいえ！ 本当に嬉しいんですよー、自分が書いているものが好きだって言ってもらえるのは(＾▽＾＊) コメントを全くくれないと「つまらないのかなあ…」って不安にもなりますしねえ(笑) 本当にありがとうございます、よりよい小説を書くために精進していきます！ (2015年11月22日 23時) (
レス) id: a9e0db2ec6 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - そんな。大げさですよ！汗 (2015年11月20日 19時) (レス) id: 67d98e9ffd (このIDを非表示/違反報告)
鈴鐘草 - レナさん» わあああまた遅くなってしまいました！ 本当にそういう言葉は嬉しいです、これからも励みにさせていただきますね^^ (2015年11月20日 18時) (レス) id: 0572002cfd (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - 応援してます！ (2015年11月14日 11時) (レス) id: 67d98e9ffd (このIDを非表示/違反報告)
鈴鐘草 - レナさん» 初めまして！返信大変遅れました、すみません…。息抜きに来たのですが、コメントを下さった方がいたなんて…（感涙） ありがとうございます、大好きといって頂けて作者冥利に尽きます（´ω｀*）コメントありがとうございました、これからも頑張りますね…！ (2015年11月14日 0時) (レス) id: 0572002cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈴鐘草 | 作成日時：2015年6月7日 22時
