１６−４.憎らしい君とリング戦にて ページ34
父親は壁にもたれ、動かない。
顔はうつむていて見えない。
傷を追った腹部を抑えるその手が、また動いて、私を攻撃するんじゃないかと思わせる。
だけど、それはそれでいいかも、だなんて思いながら、そいつに近寄った。
……こんなにも、弱かったのだろうか？
私は、賭けたのだ。
父親が私を攻撃できないということに。
私は、そっくりだから。
父親が愛した人＿＿私の母と、生き写しだったから、だから、泣きそうになっている所だなんて攻撃できないだろうと踏んだのだ。
汚いやり方だけど、私はあの時、死ねないと思った。
死にたくない、と。
だから何をしたって生きてやるのだと、そう、思った。
「＿＿甘い、ねえ」
いつもの猫なで声を出す。
ゆっくりと顔をあげ、私のことを視線でとらえると、不敵に笑う。
こんな状況なのに。
その短い人生が、終幕を引こうとしているのに。
「貴方は、最大のミスをおかしたよ？
それが何かわかる？
＿＿あの、毒」
そう、私の腹部を襲った短剣に塗られていた毒は、体の血液中に侵入すれば、体が麻痺してしまうものだった。
何故知っているのか。
そんなの、簡単。
無理矢理に口端をあげる。
「あれは一度受けたら、耐性ができて、もう……効かなくなるの。私にはもう効かない」
してやったり、その笑顔を浮かべるつもりだったのに、逆に父親がその表情をした。
……え？
「あー、そうかよ。知らなかったなあ……」
芝居がかかったその口調に不信感を持ちながらも、笑い続ける。
「ねえ、あの時、何故私を攻撃できなかったのか、自分でもわかってる？」
そう。
私は母にそっくりだから。
だから、攻撃ができなかったんだ。
それも自分でわかっているのだろうと踏んで聞いてやったのに、何故かその双眼が揺れた。
「……？ ……私が、母さんにそっくりだから。もう母さんはいないって、わかってるくせにね？」
そこまで言ったら、また、父親はにやりと笑う。
安堵したかのように。
「そうだよ。てめえが、あいつに生き写しだから……。……きたねえ真似しやがって……」
何？
何故、そんなに楽しそうなの？
わからない、どういうこと？
けど、表情は保ち続けて、父親を見据えた。
その目を見て、なんだか、こいつが何をしようとするのかが、霧が薄れるようにわかった。
私と同じ癖。
私は、嘘を吐くとき、いつも「そういう」目をしているから。
……だけど、でも。
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鈴鐘草(プロフ) - レナさん» いえいえ！ 本当に嬉しいんですよー、自分が書いているものが好きだって言ってもらえるのは(＾▽＾＊) コメントを全くくれないと「つまらないのかなあ…」って不安にもなりますしねえ(笑) 本当にありがとうございます、よりよい小説を書くために精進していきます！ (2015年11月22日 23時) (
レス) id: a9e0db2ec6 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - そんな。大げさですよ！汗 (2015年11月20日 19時) (レス) id: 67d98e9ffd (このIDを非表示/違反報告)
鈴鐘草 - レナさん» わあああまた遅くなってしまいました！ 本当にそういう言葉は嬉しいです、これからも励みにさせていただきますね^^ (2015年11月20日 18時) (レス) id: 0572002cfd (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - 応援してます！ (2015年11月14日 11時) (レス) id: 67d98e9ffd (このIDを非表示/違反報告)
鈴鐘草 - レナさん» 初めまして！返信大変遅れました、すみません…。息抜きに来たのですが、コメントを下さった方がいたなんて…（感涙） ありがとうございます、大好きといって頂けて作者冥利に尽きます（´ω｀*）コメントありがとうございました、これからも頑張りますね…！ (2015年11月14日 0時) (レス) id: 0572002cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈴鐘草 | 作成日時：2015年6月7日 22時
