腹が減っては戦ができぬ ページ2
おれは料理が得意だ。
といっても、作れるものは少ない。一番の得意料理はオムライスだ。釜に残った白米をすべてフライパンへ移し、ケチャップとともにふるふると混ぜ合わせていく。
ホクホクとケチャップの香りが止まらなくなった頃、ピンポーンとチャイムがなった。お客なんて珍しい、普段は鳴らす側だから少し新鮮だ。
「はいよって、また珍しい人が来たもんだ!どうしたんだよ」
「…いや、最近土方コノヤローの機嫌が嫌に良くて、毎食俺のメシにまでマヨぶっかけてくるんでサァ。そろそろマトモな飯食いてぇと思ってな」
気のせいか、少し脂ぎった様子の総悟の目は虚ろだった。
「うちを飯屋かなんかやと思っとります?まあ、なんだ。ちょうど作りすぎて困ってたところさ。あがってき〜」
コトリ、彼の目の前に黄金のベールを纏ったそれを置く
「うわぁ!うまそうでさぁ!Aさん、これ、本当に俺が食ってもいいんですかぃ?」
「なんや、せっかく総悟のために作ったっちゅうのに、食われへんのか?」
ニヤニヤしながら見つめてやれば、目の前の彼はいそいそと手を合わせた
「く、食いまさぁ、いただきやーす!」
「ご馳走様ですAさん、うまかったでさぁ。俺、キムチ入りのオムライスなんて初めて食べやした!あんたさえよけりゃあ、また食いに来てもいいですかぃ?」
総悟はものの数分でぺろりと平らげた。結構たくさんよそってやったんだが、流石は成長期といったところか
「かまわんさ、また気が向いたときにおいで〜」
それからは次に食べたいもの、マヨネーズの油分量、そんなことをぽつぽつと話していたが、ふいに外から誰かを呼ぶ大きな声が聞こえた。そろそろお開きの時間らしい。
「マヨネーズ星の皇子が君をお探しだよ?ほらほら、早くしないとオレまで巻き添え食らっちまうからさ〜。じゃ、またね♡」
「ありがとうございやした。次は手土産でも持ってきまサァ、それじゃ!」
ぱたん…
扉が静かに閉じてから数秒後、外は賑やかな音で埋め尽くされていた
「おい総悟、お前仕事サボってどこ行ってたんだ?やけに機嫌いいじゃねえか」
「土方さん、あんまり怒ると血糖値が上がりますぜぃ。俺ぁちょっくらケチャップ天国に行ってきただけでサァ」
「ケチャップ天国ぅ?この辺に飯屋なんて…ってあ、テメェさてはAん家に押しかけただろ!」
「羨ましいだろ土方。テメェは一生マヨネーズでも食ってろ」
「総悟ぉぉぉおお!」
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作者名:狛石蜻牡 | 作成日時:2022年11月27日 22時