十六片 ページ17
ザアザアと雨が降る中、治崎は倒れていた。
綺麗だった服は泥にまみれ、顔は殴られたのか赤く腫れ、体には青痣があった。
近くにあったはずの食料はどこにもなかった。
「ど、して…。信じて、たのに」
か細い声で何度も呟いていた。
雨とともに涙が頬を伝った。
一時間前、治崎のところに怪我人が来た。
小太りの男性と痩せ気味の女の子だった。
痩せ気味の女の子は頭に怪我をしたのか意識がない。
「おめぇが怪我を治せる『道具』か」
「…私は、神様です」
「いや、『道具』だ。それよりもこいつを治してくれ」
「…はい」
治崎が怪我をしたところを触ると、ぼんやりと黄緑色に光怪我が治っていく。
「…治せました」
「意識が戻らんぞ」
「怪我を治すだけなので、意識までは」
「話が違うではないか!!」
小太りの男性は怒り出す。
そして
「嘘を云うな!治せ!治せぇぇえ!!」
治崎を殴り始めた。
「やめっ…」
もう治崎の声が届くことはなかった。
ただ必死に痛みを耐え続けた。
やがて雨が降り出し小太りの男性は痩せ気味の女の子を抱えて帰っていった。
治崎は痛みから動けずにそのまま倒れていた。
「ど、して…。信じて、たのに」
動くようになった体を起き上がらせる。
そして泥だらけの手で怪我をした場所を治していく。
「神様って、云ったのに。道具じゃ、ないのに。私は…」
嗚咽を漏らし、治崎は久しぶりに涙を流した。
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クマぽん - 中也とのコントみたいなのがとても面白かったです!!!!!これからも頑張ってください!!!! (2018年12月19日 18時) (レス) id: a657e0068a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衿歌 | 作成日時:2018年4月28日 23時