【名前固定オリジナル】アカツノ【男主】

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あの事件が起きてから、このスラム街に誰も近づこうとはしない。それどころか毎日毎日スラム街の生き残った住民が１人ずつ消えていくので、不安が高まるばかり。


噂によれば「神隠しにあったのではないか」と言われているが、本当のことは分からない。怖さに耐えながらも、スパークは剣の稽古をし続けた。


あの剣を身につけて以来スパークは負けることがほとんどなく、師匠のトムでさへ降参させた。王はそれを見て、「スパークを次の弟子にしよう」と威張りながら白い歯を見せる。


スパーク少年はうれしさのあまり、鼓動が徐々に高鳴る。だって憧れていたトムと同じ仕事ができるのだから。


それからというもの「スラム街」に帰る機会はなく、トムの役目を今でもしている。





そしてあの事件が起きてから１０年が経過し、ようやく休暇をもらうことができた。しかしスラム街に戻ってみると、悲惨なことが待ち受けていた。なんと住人がヴァルサとデニーだけになっており、２人以外の人間は消えてしまっていた。


スパークは草がぼうぼうと生えている地面に正座して、右手を地面に叩きつけながら嘆き散らす。その声にもならない嗚咽が辺り全体に響き渡る。


「どうしてみんな消えたんだ……ハハハハハ、笑いが止まらねな。『アカツノ伝説』について何も知らねえし、イッシ―もママもパパもたくさんの友達も死んだ。黒服の正体を知ったって、何にも解決されないじゃないか！ 飲み水も消えて、俺は生きる意味が分からなくなった。そして、俺は『くそ野郎』にしかなれなかった。みんなを救えていれば……ヒーローになれたかもしれないだろうに！」


スパークの嘆きを聞いていたヴァルサは、白く透き通った右手を差し出す。けれど彼女がどんな表情をしているのかは想像できない。


「嘆いたって……仕方ないよ。もう起きたことは変えられないわ。だから、立って。あなたはきっと素晴らしいヒーローになれる。そう信じ続けることができれば希望が持てるんじゃない？ 人はいつもそうやって理想を見つめながら生きているのだから」

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