白い傘、オレンジ色のあめ。 (ページ21)

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「Aさん、お待たせ」

「あっ…？井口くん」

ようやくおれに気づいたAさんが、困り顔からうれしそうな笑顔でおれを見る。
その笑顔にたまらなくなって彼女の手を掴み、「失礼します」と男に一瞥を送った。

和輝が慌てて後ろをついてくる。

「い、井口くんちょっとゆっくり」

「ん？ああ…ごめん」

早歩きになっていたらしい。男が見えなくなったところで手を離し、歩みを止めた。

「こんばんは」

「こんばんは。…あ、今日は和輝もいて」

「あ、新井さん」

「こんばんはー。はじめまして、ではないね」

和輝はAさんを見て覚えてる覚えてる、と明るく言う。
うれしそうに和輝に笑顔を向ける彼女に

「ごめんね突然連れ出して。困ってるふうに見えたから」

と謝ると、

「そう、困ってた。あと少し遅かったら舌打ちして脛蹴ってたかも。未遂で済んだ、ありがとね井口くん」

とくすくす笑ってお礼を言われた。