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目を開けると、自分の家とは違う白い壁が目に入った。
背中に体温を感じる。
恐る恐る首だけで振り返ると、Aさんがすやすや眠っていた。
驚いて声が出そうになったのをこらえ、今度は身体ごと彼女に向く。
ベッドが揺れる。
化粧を落とした彼女は、雰囲気こそ変わらないがいつもより幼くみえた。
少し開いた薄い唇がかわいい。
ずっと見ていたい気持ちを押し込めてトイレを借りようと身体を起こし、足元からベッドを降りる。
…どうやら本当に持ち帰られてしまったらしい。
一人暮らしの部屋は古い公営住宅のような様相で、2DK。
リビングや、キッチンや、そのほかいろいろな場所に彼女の生活を形作るものが並んでいて、なんだか照れくさいような変な気持ちになった。
デザイナーをしているという彼女の、ワークスペースらしき一角が目に入る。見覚えのあるアートワークが、ーおれらのCDなどが並んでいるのが目に入り、なぜか見てはいけないような気がして目を逸らした。
トイレから戻ると、横になったまま目を開けたAさんと目が合う。
「…おはよう。いま何時？」
「おはよう…おれも知りたい」
そうだよね、と笑いながら体を起こし、壁の高い位置にかかる時計を見上げる。
つられて目をやると時計は8時を指していた。
ベットから離れる気配のない彼女は朝が弱そうだ。
「ごめんね…わたしソファで寝てたんだけど、気づいたらここにいた。びっくりしたよね、何もしてないからね」
「いや…おれこそ昨日の帰りのこと覚えてなくて…めちゃくちゃ酔ってた気がする。ズカズカ上がり込んじゃってごめん」
「いいえ。シャワー使う？」
「…あ。いいですか？」
彼女の言葉に甘えてシャワーを浴びた。
何もしてないのか。まあ、いかにもそんな感じだけれど。
ほっとしたようながっかりしたようなよくわからない感情は、シャワーと一緒にきれいに流れていった。
「シャワーありがとう」
「んーん。何か食べる？」
そういえばいつからタメ口で話してるんだろう、などと思いながら、どこか行く？と言う彼女に頷いて身支度をする。
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作者名：あこ | 作成日時：2021年12月14日 15時
