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その後もAさんとふたりで話した。
6年前に東京に来たこと、デザイナーとして働いていること、好きなお酒、食べ物の話。
Aさんを深く知るにはまだ不十分だけど、あいまいだった彼女の輪郭くらいはつかめた気がしていた。
「たぶん前テーブルで飲んだ時に話してると思うけどね〜」
「ごめん、その日の記憶が全くなくて…」
「だと思います、女の子に膝枕してもらってデレデレしてたから」
「えっ」
もう本当おれは何を……
「女の子のお膝なら、わたしも好きだから大丈夫。一緒」
「たぶん一緒じゃない…」
ケタケタ笑うAさんに、おれの失態も少しは救われる。前にもこんなことあったよね。
「でもそんなに酔っちゃうなら、Azだったらうちが近いから泊まりに来ればいいですよ」
耳を疑った。
「…………え？」
「ん？」
「ん？？」
「何かおかしい？」
「いや、色々？全部？」
「同じお店の常連だもの、酔い潰れちゃった時は助けますよ。ホテルがわりに、ね？」
ね？と可愛く首を傾げるAさん、ホテルってそっちの意味に聞こえてしまうのはおれがあまりに汚れてるからなのか。おれがおかしいのかこれは。言ってることはまさにお誘いのそれなのに、誘われてる感じは一切しないのがまた不思議だった。
いつも誰かと飲むときはたくさん喋るし、相手に退屈させないようにいっぱい笑わせる。でもAさん相手だととにかくペースを乱された。
おれの想像を超える言動の数々。
たくさん喋ってくれるけど話すことはどれもふわふわしていて、お酒を飲むたびどこかへ流れてしまいそうな、そんな軽い会話が続く。
楽しくて、でももどかしくて、もっとこの人のことを知りたいのに、聞きたいこともあるのに、なんだか踏み込めない。
モヤモヤとくすぐったい気持ちを流し込むようにハイボールを頼むこと、何杯目…？
おれは相当に酔っていた。
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作者名：あこ | 作成日時：2021年12月14日 15時
