白い傘、オレンジ色のあめ。 (ページ2)

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彼女の手にはのど飴。

「これ…」

「飴…」

「声が掠れてるようなので。これ、のどの痛みにすごく効くので、よかったらお礼に」

「え…」

「受け取ってもらえませんか？」

淡々と話す人だな、と思った。
高くも低くもない、優しい声。

飴を人に渡すって…

「…関西の方なんですか？」

「え？」

「いや、関西のお姉さん方は、よく飴ちゃんを人にあげるって聞くので」

「それって、おばちゃんじゃないですか？(笑)関西ではないです。おばちゃん…ではあるかもしれないですけど」

口に出してから失礼なことだったと気づいたけど、彼女が笑ってふっと空気がゆるんで、バツの悪さと、さっきまで暗く沈んだ気持ちは一瞬で夜に消えたようだった。

「…飴、ありがとうございます。いただきます」

ようやく受け取るとまた彼女は柔らかく笑った。話し方も淡々としていて落ち着いた印象を受けるのに、笑うと子供みたいだと思った。

「では。傘、ありがとうございました」
彼女は軽く会釈をして、そのまま後ろを向き歩き出す。

喫煙所に寄っていこうとしていたおれの足は、喉に悪いからやめようと思い直して90度右に向き車へと向かっていた。

振り返ると、彼女は白い傘を差して歩いていた。さっきよりも光って見える白い傘を見て、
本当だ、気づかなかったけど、雨が少しずつ降り始めていた。