side K ページ7
バタン!
雑に閉めた玄関のドアの音がいつもより大きく響いた。
今日は藤ヶ谷と喧嘩になり、大人気なくも一人で帰ってきてしまった。
小さな言い合いをした事は今までもあったが、さすがに「誰でも良いんでしょ」と言われたのにはこたえた。遊び人と言われた様な気分だ。俺そんな風に思われてたのかな。
「藤ヶ谷一筋なんだけどなぁ」
誰もいないリビングでポツリと呟く。
ずっと信用されてなかったのかなぁと思うとジワッと涙が滲んできたので、腕でグシグシと拭う。
大倉にでも話を聞いてもらおうとスマホを手に取る。
…
…
…ダメだ。やめよう。
多分藤ヶ谷が気にしてるのはこういう所なんだろうな。
藤ヶ谷が俺の交友関係を気にしてるのはわかってた。特に大倉の事を。
それでも俺は大倉を親友だと思ってるし、付き合いをやめようとは思わなかった。
藤ヶ谷が何か言いたげにしているのはわかっていたが、親友なんだから大丈夫だって!としか言わなかった。
そんな俺に藤ヶ谷はいつも困った様に微笑んで頷いてくれていた。
藤ヶ谷への片想い期間が長かった俺は、そんな風に嫉妬してくれてる事が嬉しかったりもした。そのために大倉と会っていた訳では勿論ないのだが、たまに不服そうな表情をしている藤ヶ谷を見て、自分を好きでいてくれてるんだなぁなんて呑気に思ったりしていた。
でも、そうやって調子に乗っていた事が恐らく今回の喧嘩に繋がってしまった。
スマホを見ても藤ヶ谷からの連絡はない。
あぁ…愛想尽かされちゃったんだなぁ。
そりゃそうだよなぁ。
「せっかく両想いになれたんだけどな…」
口に出してしまうと、それがスイッチの様に涙が溢れてきた。
ソファーに深く座って上を向き、腕で目を押さえた。
そんな事で涙は止まらないんだけど。
泣き疲れて眠ってしまえればまだ良かったが、考えれば考えるほど辛くて結局一睡も出来ず朝が来た。
今日は7人全員でバラエティーの収録だ。気まずいから行きたくないなんて言っていられない。
出発までの時間、必死に目を冷やしてから準備して家を出た。
付き合い始めてすぐの頃、メンバーには伝えて良いんじゃないかと藤ヶ谷は言ったが、俺は断った。誰よりも俺が公私混同したくなかったからだ。
メンバーに伝えてしまったら、皆がいる前でも藤ヶ谷への気持ちが溢れてしまい、俺自身が仕事中もデレデレしてしまいかねない。
俺はグループとしての仕事が本当に大切だった。
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作者名:あっちゃん | 作成日時:2022年12月25日 17時