． ページ9
「うっわ久々!! 前の栞田会以来やんな？」
左目の泣きぼくろにつり目、さらりと軽く流れる髪。傍から見たら美人なのに、話し方がなんか……うん。
………………残念美人。心の中でそう名付けると、早速その人が私の方を向く。
「で！また会うたな、松井の彼女可愛ええやん〜♡」
「えっ、いやそんなじゃ、」
「違う違う笑 前言ったバス停仲間!!水澤Aさん、」
フルネーム、なのに下の名前で呼ばれてドキッとする。
残念美人さんは合点が行ったのか「あー！」と叫んで姿勢を正した。
「水澤さんか！うち
よろしゅうな？と言いながら笑う顔を、また私的分析する。
………うん、何も考えてなさそう。直感型、的な感じかな。
それから…………松井くんを苦しめているかもしれない顔。でも、松井くんも気を許してるなら多分、悪い人じゃない。
「水澤です………」
「うち
MOnONe。私の職場だ、世界は狭いな。
頭はいいんだ。
松井くんにあんな顔させる原因かもしれない人には、頼りたくない。
そう思いながら「よろしくお願いします、」と手を握る。
「なんだ、知り合いだったの〜??」
「休みの日にたまたま水澤さんの落し物拾うてな、その時少し顔合わせとった笑」
やんわりと手を離しながら、栞田さんは松井くんと話を再開する。
今日は早く松井くんと会えた、つまりいつものバスは今から………
楽しそうな2人を見たくなくて、声を掛ける。
「松井くんこれ……私バス来たから帰るね……」
「え？いつもの30分は………??」
栞田さんと過ごせばいいじゃん。
自分でも嫌になるくらいのもやもやで、心の中でそう吐き捨てる。
「うん、ごめんね…」
「そっか…分かった、明日は付き合ってね??あとそれは付けて帰って、」
明日返してくれたらいいからさ??
松井くんの匂いがマフラーから香る。
「うん…」
松井くんは笑顔で「また明日!!」と手を振り、また栞田さんと話し始める。
そんな松井くんに、初めて少しの怒りが沸いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷 雨 | 作成日時：2021年2月2日 23時
