コ ー ヒ ー フ レ ッ シ ュ . ページ7
「あ、水澤さん!!」
珍しくイヤホンをせずに待つ松井くんは、冬の装いを始めていて、薄い黄色のジャンパーにマフラーを巻いて手を振った。
ポケットのカイロを出して手で温めながら手を振ると、松井くんがぎょっとしたように目を見開いた。
「ちょ、それ水澤さん寒くないの!?」
寒くなかったらカイロに頼ってないよ、松井くん。
心の中で突っ込みながら、「寝坊しかけて、暖かめのコートとかマフラー出す時間無くて……笑」と曖昧に笑った。
「え、じゃあこれ使って!?体調崩しちゃ大変だし!」
松井くんが、マフラーを手に取る。
それをそのまま、私の首元に持ってきた。
「………へ、待っ、大丈夫だよ松井く、」
「だーめ、女の子なんだから。 じっとしてて?」
松井くんの、指が触れる。
緊張からか少しだけ熱くて、でも冷たいその指が首に触れると、急に近くなった距離にどきっとした。
「松井く、」
「ん?」
ぱっと顔を上げた松井くんが、上目遣いで覗き込んでくる。
待って、離れて松井くん。
どきどきとなる胸の音が聞こえそうになって反射的に顔を引く。
「水澤さん?なに、どうかした?」
心配になったのか、すっと松井くんが手を伸ばしたところで。
「あれ、松井!?!?」
聞き覚えのある大声が響いた。
猫被った犬。
「美咲!?」
その美人さんを見て松井くんは一瞬だけ。
とても切ない顔をした。
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作者名:氷 雨 | 作成日時:2021年2月2日 23時