【五条悟】ブラックスマイル 2

71. 幸せになる力 ページ37

【貴女side】



男「…誕生日？」

「そう。Aが生まれた日」


いきなりそんな事を彼は聞いた。



男「6月20日だろ。毎年祝っていた。
それに…俺たちの記念日でもある」

「へえ。僕は初めて知った。
昔聞いたけど教えてくれなかったんだよね」



そして優しく笑う。



確かに私は、彼に一度も言った事は無かった。
自分の誕生日など…どうでも良かった。

祝われたいとも思っていなかった。
だから本当は私は、6月生まれでも無い。




「彼女の好きなブランドは？」

男「…CH○NELが多いな」

「彼女の好きな食べ物は？」

男「……和食が多い」

「じゃあ彼女が1番喜ぶ事は？」

男「さっきから何なんだ
オマエも俺をバカにしてんのか！？」


この人の心拍数が上がってきた。
本当に刺されるかもしれない。
そうすれば彼は犯罪者になってしまう。

それに高専にもきっと迷惑が__「してねーよ」



「誰もアンタをバカになんかしてねーよ。

寧ろ羨ましいわ
俺が知らない事をアンタは知ってて

俺とは比べもんにならねーくらい長い間
アンタはAと一緒に過ごしてきたんだろ


俺がAについて知ってる事なんて



1月12日。

記念日とか誕生日どころか…
Aが俺の前から居なくなった日だけだ」




大きなため息を吐いてそう言った。




男「言いたい事はハッキリ『間違ってんだよ』」


彼の術式でナイフが弾き飛ばされる。



「俺もアンタも間違ってんだよ。Aはな


趣味じゃねえブランド物貰わなくても
自分で好きなの買うし
むしろ相手にプレゼントしたいタイプだし

お高い和食食ってるより
自分で作った飯でいいって思ってる。
お前だって料理上手いの知ってんだろ？

されて喜ぶ事なんか知らねーよ。でも雨の日に
てるてる坊主作って勝手に喜んでるし

俺もアンタも何かしてやろうって思ってたけど
Aは自分で幸せになる力持ってんだよ。


良い歳してんだしバカじゃねーなら分かれ。
オマエの枠にAを収めようとすんな」







自分を理解して欲しいなんて

思ってもいなかった。




だけどこうして

少しでも私を理解してくれようとする彼に





「…ありが…とう」




そんな本音が、溢れ出た。

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