【五条悟】ブラックスマイル 2

58. 求めてはくれない ページ21

【五条side】




『…関係、無いでしょ』

短い言葉だった。


僕の足元を見たまま、彼女はポツリと呟いた。



何回だって振られた。誘いには断られた。
挙げ句の果てには無視までされた。



その理由の全てが

彼女の腹の底にあった俺への真の拒絶が

その言葉に詰まっていたように感じた。





ムカついた。

こんだけ殴ったり首絞められたりされておいて
あの男を責めるどころか僕から庇ってる。


『私は大丈夫だから』と言わんばかりに笑って
何とか僕の機嫌を保とうとしてる。


いつだって人の事ばかりだ。
自分さえ我慢すればそれで良いと思ってる。


こんだけ…助けたいと願っても
本人に救われる準備がなければ救えない。


傑の件で学んだはずなのにさ。2回目だよ。



それでも助けさせて欲しかった。助けたかった

彼女にはありのままでいられる場所を見つけて
少なくとも誰にも縛られる事なく生きてほしい

そう思っていた。



だけど…違ったんだな。全部空回りだ。



Aは余程、僕に救われるのが嫌らしい。

そりゃそうだよな。当然だ。




都合の悪い事から目を背けて
今だって自分のエゴで彼女にキレた。




「…あんな事言わなきゃ良かったよなぁ」



そう思うけど

じゃあ僕は何と声をかけるべきだったんだろう




気がつけば僕が医務室に向かっていた。



家「何そこに突っ立ってんの」

「硝子…僕さ、何でこうも
Aを分かってあげられないんだろう。

こんなに好きなのに」


軽く事情を話すと
分かりやすくため息を吐かれる。


家「高専時代よりずっとずっと拗らせてるな」

「自覚済みだよ。
色々知った上でそれでも好きなんだ。


僕、結構考えてる方だと思うんだよね。

どうしたらAが幸せになれるか
どうしたらAが笑ってくれるか

まぁ全部空回りな『求めてないんだろ』」




家「別にAは求めてないんだよ。


五条は態度に出過ぎ。
Aに好かれようと必死になってるし
柄でも無いのに変に気を遣ってる。

2人の間に何があるのかは知らないけど
それ、Aも気付いてるから」





硝子の言う事は全くその通りで
僕はぶっちゃけ、めちゃくちゃ無理してる。




「それじゃ、ダメなのかな」

家「ダメだからこうなったんだろ」




あー、僕ってこういう所不器用だよなぁ。

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