【五条悟】ブラックスマイル 2

42. ゆめうつつ ページ3

【五条side】



『…くん。




五条くん、聞いてる？』


「えっ」



ボーッとしてた。


隣を見ると、Aが僕を見て笑ってる。



『聞いてなかったでしょう？疲れてる？』

「あっはは…ごめん何だっけ」

『七海くんが怒ってたよって話』




状況が掴めない。

まずAの髪色がピンクに戻ってるし
さっきまで何の話をしてたか分からない。


『で、私に聞きたい事って何？』



聞きたい事…？


恵の父親の事か？それともまた別の事？

傑？それとも彼女の両親？？



思い当たるものは全て

僕が…五条家が彼女から奪ったものだった。




口は勝手に開いていた。


「…僕を、恨んでる？」




自分でも驚いたけど
その言葉に全てが詰め込まれていた。




Aも驚く。少し目を見開くだけだけど。

そして笑うんだ。この後の答えは予想出来た。


『全然』とか『何とも思ってないよ』とか。
いつもそんな返答しかしないから。



だけどその口からは


『当然』


そう返ってきた。



『あなたの家が、私から両親を奪った。

あなたが私から友人を奪った。

私、知ってるのよ。
あなたが伏黒さんを殺したんでしょう？

あなたが…私の大切な人を奪った。


全て奪われた。誰も居なくなった。なのに

私に笑って欲しい？幸せになって欲しい？

あなたって本当に面白いね
ほら、おかげ様で今笑えてるよ。



…そういえば怒って欲しいとも言ってたよね。

ちゃんと今怒ってるでしょう？
これで満足？貴方の思う私の幸せはこれなの？


…フフ、本当に笑いが止まらなくなる。



どのくらい恨んでるか教えてあげようか


…殺したいほど

殺しても殺し足りないほど恨んで憎んでるよ』

　





彼女の顔がどんどん歪んでいく。


泣いてるような、笑ってるような、
それでいて怒っているような。







そしてそれが夢だったと気づいて


安心のような、後悔のような
後味の悪いものが残った。




…間違いないよ。


夢の中でAが言っていた事に
何一つ間違いは無かったんだ。



いつか僕は本当に聞かなければならない。


彼女の返事を。

たとえ夢と同じ内容だったとしても
それを受け入れる義務が、僕にはある。

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