【五条悟】ブラックスマイル

6. 私の為 ページ8

【五条side】





本当にからかうつもりだけだった。

さっきまで笑ってた自分の顔は嘘のように
無表情になっていくのに

彼女は変わらず笑ってる。



慣れてるって何だ？

なんで抵抗しなかったんだよ
本当に傷つけられても何とも思わないのか？


『…ヤらないの？』

「____するわけないだろ、そんな事」



何とも思わないハズが無い。
心が泣いてんのに気づいてないだけだ。


「…君は何でずっと笑ってんだよ」

『笑ってると誰も嫌な気分にならないから』

「それすらも他人の為かよ」

『違うよ、私の為』


その答えにますます分からなくなる。


『私は…五条家のずっとずっと遠縁で
ごく普通の非術師の家系だった。


だけど何故か私に五条家の術式が刻まれた。


そして何年か経って
私が相伝の術式を持っていると知って

私が世界の呪力バランスに及ぼす影響とか
御三家の血筋とかの関係だと思うけど

五条家の人間は呪詛師に私の両親を殺させた。


もちろん私を殺そうとしたけど失敗したから
『都合の良い家』に里子に出した』

「都合の良い家？」

『口止め料を喜んで受け取ってもらえるような
下賤な人間の家。

そこでは笑わなきゃ生きていけなかった。
喩え身体も心も道具のように扱われたとしても


自分の身を最低限守るためには
そうするしかなかった』



いっそ、誰がやったのか炙り出すより先に
一族の老害を皆殺してしまおうかとさえ思った

なのに彼女本人は
そんな事を話している時でさえ笑っている。




「…僕を恨んでる？」

『恨めるほど他人に執着出来ないの。

それに、両親が死んだのは私のせい。
私が生まれてきてしまったのがいけなかった


いっそあの時一緒に死ぬべきだった。
死ぬのが怖くて今日まで生きてきてしまった。

全部、私の判断ミス』


笑ったままの彼女は、完全に心が壊れている。

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