【五条悟】ブラックスマイル

15. 嘘の世界 ページ17

【貴女side】




「ホント勘弁して下さいよ…

お客様何人か怒鳴り込んできましたよ！
急に連絡取れなくなったって」



ホールスタッフに怒られる。まぁそうだよね。
だから謝りに来た。


『ごめんね、今月分の給料は
違約金に回してもらって大丈夫だから』


「…これからどうするんですか？

他のお店に移るんですか？」


この人も不思議だ。



『もしかして心配してくれてる？』

「そりゃあ顧客が、まさに金にモノ言わせる
大企業の社長ばかりですからね…

見つかったら何されるか…」


『その時はその時だよ』

「笑ってる場合ですか！？

それに、後輩スタッフ達も心配してんですよ！
蘭世さんに何かあったんじゃ無いかって…」




そうやって心配してくれる人が私にもいるのは
ありがたい事なのかもしれない。


「…ずっと思ってた事聞いて良いですか」


『何？』

「何で…いつも笑ってんですか？？

俺、アナタと仕事し始めて5年くらいですけど
笑ってる以外の顔見た事ないです

今までに何回もあったでしょ、
後輩のミスとか…怒って当然だって機会は。

でも、蘭世さんだけはずっと笑ってた。
アナタは…何を考えて仕事してたんですか？」



何を考えて…か。


『何も考えてなかったよ

嘘でも何でも良いから笑っていれば良い
ここはそういう世界でしょう？』



私にピッタリの世界だった。
本当に何も考えなくて良かったから。

酒臭くて身体を触ってくる男たちも
あの時と比べれば別に気持ち悪く無かった。


そんな場所を自分から捨てて…
高専に戻るって選択を取るなんて
また判断を間違えたような気さえする。


もう過ぎた事だし仕方がないんだけどね。
それに…いざとなればまた蒸発すればいいし。

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