サーカス団員は隙だらけ (ページ39)

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捨身ってなにページ39

グリムが言ってた「闇堕ちバーサーカー状態」ってのはこれのことか。魔力の暴走だけじゃなくて、自身もラスボスみたいな格好になるらしい。

脈打つ体と反対に頭はすこぶる冷静で、むしろこんな呑気なことすら考えていた。

『寮長。僕アンタ自身のこと、いま初めて知ったよ』

「ハッ、わざわざ哀れみに来たか？"僕も同じです"って？」

『まさか！僕はさ、自分がいい思いするために人を駒みてぇに扱うヤツがいちっっばん嫌いなんだよ』

一度距離をとってから身を屈め、迫り来る数々の攻撃を避ける。

攻撃の何もかもは後ろの影がやっているようだ。寮長自身はそいつを操ってるだけ。

寮長本人が止まれば影も止まるかもしれない。

その途端、体が地面に叩きつけられる感覚がした。上から来たか。

影が寮長の後ろへ戻ろうと飛び退くその一瞬。

ポケットに入れていたマジカルペンを取り出し、寮長のドテッ腹に向けた。

『【呪われてあれ(ｱﾅﾃﾏ·ｼｯﾄ)】！』

瞬間、寮長の身体が大きく吹き飛んだ。

初めて人前で使った僕のユニーク魔法。
自分が受けた衝撃をそのまま相手に返す魔法。

ゆらりと立ち上がる寮長に問いかけた。

『なぁ寮長！"使われる"苦しさをアンタもよく知ってるんだろ！？なのに何故！ひとを使い捨てるみてぇに弄んだ！？』

僕の声も聞こえていないようで、さらに凶暴性を増すばかりだ。

「テメェ…やってくれんじゃねぇか！！」

攻撃がさらに重くなる。

僕のユニーク魔法は一撃の衝撃を返すものだから、攻撃を受ける度に威力が書き換えられている。

つまり、自分の身体が耐えうる最大限の攻撃を受ければ相手にも大きな負荷がかかるし、逆にタイミングを間違えればちょっと擦りむく程度の攻撃しかできないこともある。

すると背後でリドル寮長の声がした。

「ボクの魔法は跳ね返されてしまう！魔力の限界が来る前にどうにか気絶させろ！」

無茶を仰る。でもそれ以外に方法がないのも事実。

ただ、我を忘れているからか攻撃ばかりで防御をしない。ジャックの牙は確実に当たってるし、ケイトセンパイの炎もちゃんと効いてる。

うまく隙をつけば、いけるかもしれない。

腰に提げた"盗んだブツ"を右手で軽く撫でた。