売店ってなに ページ24
「よーA、よく眠れたか？」
『楽しみすぎてあんましィ』
「ガキかよ」
小馬鹿にしたように笑うのは個性ってことにしとこう。僕は気にしない、全然別に。
エースの私服姿を見るのは初めてだけど、赤が好きなのは服にも及ぶらしい。なんていうか…オシャレだ。
対する僕は服なんて学校関連のものしかないから、ミステリーショップで売ってた簡素なものとセンパイが貸してくれたブカブカのパーカー。オシャレエースくんと並ぶと悪い意味で際立つ。
「今日薔薇の王国ではたっくさん出店が出るんだぜ。買い物のお祭りみたいな感じ？」
『へェ、楽しみだ』
「はしゃいで迷子になるなよ？」
センセーといいエースといい、みんな僕のことちっちゃい子扱いしすぎじゃないか？
＊＊＊
顔を上げれば、暖かい日差しのもとにたくさんの出店が並んでいた。僕が知ってる出店とは違って、綺麗なテントの下に宝石みたいな果物が積まれている。
視線をずらすと服やアクセサリーも売っていて、集まるお客さんもみんなエースみたいにオシャレだ。
「先オレの買い物済ましていい？すぐ終わらせっから」
『いいよォ。見てるだけで十分楽しいし』
「そりゃ良かったな」
認めた訳じゃないが、クルーウェルセンセーに言われたようにエースの背中を見失わないように気を付けながら進んだ。
直射日光にはやっぱり慣れなくて、フードを更に深く被った。周囲からの視線も遮られて一石二鳥ってやつ。
エースの用事とはチェリーパイを食べることのようだ。彼曰く、たまに食べたくなるとわざわざ外出許可取ってここに来るらしい。
僕も一切れ買って、食べ歩きってやつをしてみた。今まで食べたゴハンより、格別に美味しく感じた。
「Aは行きたいとこある？」
『うゥん…テキトーにぶらぶら歩くとかアリ？』
「いーじゃんそれ、せっかくだし満喫しようぜ」
その後は変なオモチャで遊んだり
『指噛まれたんだけどォ！？』
「はいオレの勝ちー」
美味しいスープ飲んだり
『うまし』
服見繕ってもらったり、
「お前ならコッチだな」
『違いがわかる男ォ』
他にも満喫しまくった。
「なぁそろそろ休まねぇ？」
『体力ないなァ』
「お前にだけは言われたくぇよ」
僕が「あれなに？」と聞くたびにちゃんと答えてくれるのがエース・トラッポラ。不真面目に見えて面倒見いい。
散々付き合ってもらったし、どっかで休むか。
口を開いたとき、
·
ぞわり。
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作者名：くろかは | 作成日時：2020年3月24日 15時
