告白ってなに ページ43
ふと目が覚めてしまった。また床で寝ていたようだ。
もう朝かと窓の外を確認すると、少し白んできてはいるもののまだ月は輝いていた。
今日はマジフト大会の振替休日だから起きる必要すらない。もう一度目を閉じてみる。が、眠くなるどころか目は冴えていく一方だ。
仕方ないので暇つぶしに窓の外を眺めることにした。
明け方は肌寒く、タオルケットを肩にかけると丁度良いくらい。さっきまで寝そべっていた床は僕の熱で温くなっていたが、一歩踏み出すとひんやりと冷たかった。
そのまま窓に歩み寄り、いつかのように窓枠に乗った。今度は背を向けず、足を外に放り出すように座る。ぷらぷらと振ってみると冷たい外気が素足を撫でた。
夢見心地だった脳みそも徐々に現実に引き戻されるようで、それでいてこの状況はどこか夢のようで、不思議な感覚だった。
「A…?」
背後から独り言に近い声がした。
そうですよォ、と声だけ返す。
やはり獣人族は耳がいいのだろうか、物音には注意を払ったけれど起こしてしまったらしい。
「とびおりんなよ、ここ2階だけど」
『そんなことしませんよォ、こんな素敵な朝に』
「素敵じゃなくてもやるなよ」
いつもより低い声は掠れて呂律が回ってなくて、幼く、どこか色っぽく聞こえる。
少しの沈黙の後口を開いた。
『…なぁセンパイ、アンタも事件の片棒を担いでたんだろ』
「…あぁ」
『なんで』
シーツが擦れる音だけがして、言葉を慎重に選んでいるのが沈黙から伝わってきた。
先程より明るくなった空から目を離さず言葉を待つ。
「俺達にとってレオナ寮長は尊敬すべき存在なんだ。
頭もいいし、冷静だし、気品もあるし…横柄なとこもあるけど、実は面倒見良いし。とにかくかっけぇんだよ。マジフトで活躍するレオナ寮長をテレビで見てからずっと憧れてた。
だから、ドラコニアに負けて世間から叩かれるあの人なんて見たくなかったし、あの人のかっけぇとこをソイツらに見せつけてやりたかった。」
そのためには勝ち進むしかなかったから。
なんとか憧れの人の力になりたかったから。
「それに、ドラコニアの殿堂入りをいち早く却下したのだって負けっぱなしで終わらせたくなかったからだって言ってた。それがあの人の"不屈の精神"なんじゃねぇかって思ったんだ」
それきりセンパイの口から言葉は出てこなかった。
月の輝きが落ち着いてきた。
飛び降りてもセンパイから声は聞こえなかった。
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作者名:くろかは | 作成日時:2020年3月24日 15時