継いで②【オリジナル】 (ページ12)

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ゼオンの場合、心を揺さぶられる事は少ないようで、どんな時でも一定の量の穢れが流れている。バレッタがアミィの摘まみ食いを大声で注意した時も、ガランとアミィが大声で喧嘩した時も、アミィがゼオンに突っ掛かって行った時も、アミィの不注意で花瓶にぶつかり落として割った時の音も。……大体アミィが絡んでいるような？

ともかく。ゼオンは誰よりも長く生きているからか平然としていることが多い。けれど怒りの感情を抱いた時は、少ないながらも私が今まで見てきた人達の誰よりも穢れの漏れ出る量が増える。私がトレントに襲われた時や、つい先日言いつけを守らなかった時などがそうだった。そして今も……。

目の前にあるゼオンの手を取る。ほんの少し指が動いただけで振り解かれる事などされず、両手で握りしめた。されるがままの彼。

そのまま浄化の光を発すれば、ゼオンから漏れ出ていた穢れは消える。私は穢れを消すことが出来ても、彼が穢れを発する原因を失くすことは出来ない。そんな自分の力の無さを歯痒く思っていると、「……A」と名前を呼ばれて顔を上げる。いつの間にか私を見下ろしていた彼と視線が合った。

「人の過去まで背負う必要はない」
『え？』
「俺はお前の力に救われ、お前という存在があるから俺は俺としていられる」
『ゼオン、それはどういう意味ですか……？』

言葉の意味を訪ねたけれど、私の求めている答えは戻って来ない。その代わりに返ってきたのは

「お前がしたいと思ったことくらいは、不自由なく出来るようにしてやる。知識にしろ、技術にしろな」

だった。それを聞きたかった訳ではない私は、ゼオンを見上げながら眉を寄せて口を開いたところで、彼は顔を逸らして背を向ける。私の問いに答える気はない様子。頬を膨らませて、離れていく背を睨んでいれば

「例えこれが俺の──としても、……には──らな」

小さく呟かれた言葉の全てを、聞き取る事は出来なかった。次にこちらを向いたゼオンは普段と変わらぬ仏頂面で、乱れていた穢れも一定に流れている。そして私に鍛練の続きを促した。

納得はいかないけれど、ゼオンは言うつもりの無いことはとことん黙秘を貫く。気にはなるけれど集中しなければ怪我をするのは私だし、彼に小言を言われてしまう。それはとても嫌なので、私が今やらなければならないことへ集中することにした＿＿＿＿。