貴方のために出来ること〜もう一つの未来へ〜 part.4【名探偵コナン】

158, ページ24

「ありがとうございます……」


風見にAさんからの資料を預け、部下達を仕事に戻らせる。相当先程の彼女の空気に圧倒されたのか、みなそそくさと仕事に戻っていった。


何故かヒロだけは残っているんだが。お前も仕事に戻れよ。と視線を向けたが、いつも通りの笑顔を向けてくるだけで戻る気はないらしい。俺はお前の上司なんだが？


小さく息を吐き、Aさんに向き直る。情報屋として来たのなら、何か理由があるはずだ。それとの交換を求めに来たんだろう。


「では報酬の件w『もう頂いてます』？」


頂いている？何もまだ彼女に渡してないが？と、彼女の言葉に理解できず首を傾げていれば、『……家賃数ヵ月分+α』というこの言葉を聞いてやっとわかった。


Aさんが大怪我して入院し姿を消したあと、１週間程で組織が動き出した。


俺がAさんの家に行ったときには、時既に遅し。組織の手に寄って、見るも無惨な惨状の部屋へ変わっていた。廊下は泥塗れで、綺麗に片付けられていた部屋は荒らされ、家具類は愚か壁や天井も傷らだけ。彼女がいた形跡など、まったくと言っていいほど残ってなかった。


彼女が普段使っていたパソコンも回収されたが、そう簡単に情報を抜き出すことなど出来ず、パソコン事態がお釈迦になったらしい。しかも彼女が仕掛けていたトラップで、組織のパソコンが何台か引き摺られるように壊れたと後で聞いた。


申し訳ない気持ちがいっぱいで……、でも彼女が戻って来るかもしれないからと、部屋の強制退去だけにはならないよう手を回した。組織の目があったから、部屋の中までは綺麗に出来なかったが……。


(貴女に頼まれていたにも関わらず、僅かな時間しか稼ぐことが出来なかったんです……)


どう言葉を返せばいいかも、どんな顔していればいいかもわからずにいたら、感謝の言葉と共に彼女が頭を下げた。顔を上げたAさんの目には、純粋な色しか写ってなく、俺へ『ありがとう』という事だけを伝えて来ているのがわかる。だから


「僕が勝手にやったことですから」


『それでm「Aさんも言ったじゃないですか」何をです？』


「“貴方のやりたいことをすればいい”って、でしょう？」


『……ここでそれを出しますか』


.

159,→←157,

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す