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――あっという間の出来事だった。
Aを縛っていた鎖が千切れたと同時に、膨れ上がった魔力は爆発した。その爆発は簡単にその国を滅ぼしたのだ。
永くに渡って繁栄していた大国の首都─ザルツシュブルク─。人口も、どの国よりも多かった。一瞬の内に全て儚く消えてしまった。
爆心地には横たわる彼女の姿。唯一の生き残り。
目を覚ました彼女は、周りを見回す。大きいクレーターになった中心。草木一本生えていない。だが、見える範囲に穢れもなかった。
それもそのはず……。彼女が辺り一帯の穢れを、全てその身に抱えてしまったからだ。
現状を把握した彼女は、両手で顔を覆う。自分がしてしまったことを理解して、喉が裂けてしまうかのような大声をあげた____。
しばらく大声を上げて、泣いていた彼女。だが、いつまでもそうしてるわけにはいかない。袖で涙を拭って立ち上がった。
クレーターから出ようと足を進める。柔らかい地面。足に力を入れて歩くが、産まれて一八年間、牢屋内の石畳以外に、まともに歩いたことはない。
ふらふらとして、ぎこちない足取り。何とか端までたどり着き、クレーターの壁をよじ登る。
息切れをしながら這い出た彼女は、目の前に広がる光景に言葉が出なかった。クレーター以外は平らな地面のみ。遠く離れたところに、瓦礫らしき物が点々と見えるくらいだ。先程拭ったばかりの涙が再度込み上げる。
“弱き人達を守るための、大切なお役目よ”
母から言われた言葉を思い出し、膝から崩れ落ちそうになる。浮かんだ涙を乱暴に拭いながら踏ん張り、遠くに見える森へと足を進めて行った。
――彼女が木々の間に入り、姿が見えなくなったところで、彼女の反対方面から馬に乗った兵士達が現れた。
首都からいくらか離れたところにある関所。そこにいた彼らは、とてつもない大きな爆発音と大地の震えに急遽駆けつけたのだ。
目の前の現状に兵士達は唖然とし、言葉は愚か動くことも出来なかった。
ほんの数時間前までは健在だった首都。大都市があった場所には何もない。見渡す限りの広い土地と、大きなクレーターのみ。
首都には彼らの帰る家があった。家族が住んでいた者も、恋人が住んでいた者もいる。その全てがない。
彼らは絶望し、失意のどん底に落ちる。その瞬間に生まれる穢れ。
首都周辺に合った穢れは彼女が全て吸い取った。だがすぐに次の穢れが生まれてしまったのだ。彼女に休ませる時間など与えないかのように……__。
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雪丗(プロフ) - キキさん» こちらにまで来て頂き、ありがとうございます。こちらの小説更新はカメさん以下の速度になるかと思いますが、少しずつ更新していきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。 (2019年1月24日 13時) (レス) id: b6a8bd3c6a (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - チェシャ猫が好きすぎて、こちらにも遊びに来たのですが…こっちもすごく面白いです!トレントの場面、ドキドキしました!どのキャラクターも皆、素敵ですね♪ファンタジーの不思議さやカッコよさがとても伝わってきます。無理なさらない範囲で、がんばってください! (2019年1月23日 22時) (レス) id: cc6696e063 (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 雪丗さん» アドバイスありがとうございました!参考になりました! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - 如月 唯奈さん» アドバイスが出来るかはわかりませんが、小説を読まさせて頂きます。読み終わりましたら、如月様の小説の方へコメント致します。少々お時間下さいませ。 (2018年12月12日 0時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 私もファンタジーのオリジナル小説を書いているのですが、表現が上手くできません……何かアドバイスくださいっ! (2018年12月11日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪丗 | 作成日時:2018年11月22日 0時