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ふわりと感じる暖かみにAは顔を上げる。バレッタが彼女を抱き締めていた。優しく頭を撫でながら言葉を出す。
「一人で背負い込まなくていいんだ。貴女達一族は、私達に取って長い間の命の恩人。無くてはならない存在。何があったのか無理には聞かないよ。でも話せる時が来たら、聞かせてほしい。ほんの少しでも貴女の心を、私達に支えさせてくれないかい……?」
バレッタの優しい言葉は、Aの心の奥底まで響いていく。止まり掛けていた涙がまた溢れる。だが苦しいという感情からの涙ではない。嬉しくてだ。
(……無駄ではなかった。私達一族の行いは、ちゃんと報われていました……母様……)
Aが幼い頃、一度だけ聞いた母の弱音。
“このまま続くようなら……一族のためにも、いっそのこと、国を道連れに死を選ぶ方がっ……”
声を殺しながらも溢れる嗚咽を耳に、寝た振りをしていたA。幼いながらも、聞いてはいけないことなのだと理解し、知らぬ振りをしたことだった。
先代巫女は、悩んでいたのだ。いや……、先代だけではない。今までの巫女全員が、悩み、苦しんでいた葛藤。巫女が選んだ選択ならば、一族は皆、それに従ったに違いない。巫女も一族が許してくれるとわかっていた。
……だがその選択を選ばなかったのは、“弱き人を守るための力”だと。自分達の持っている力を、誇りに思っていたから。ずっと変わらず、継いできた志。そして幻獣王の血の後押し。それを心の支えとして、Aの代まで繋いだ巫女の血。
Aは一つ深呼吸をした。そして顔を上げる。その眼には覚悟を宿した色が見えた。彼らには大国の首都で何があったのか、話しておくべきだと考えたのだろう。
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雪丗(プロフ) - キキさん» こちらにまで来て頂き、ありがとうございます。こちらの小説更新はカメさん以下の速度になるかと思いますが、少しずつ更新していきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。 (2019年1月24日 13時) (レス) id: b6a8bd3c6a (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - チェシャ猫が好きすぎて、こちらにも遊びに来たのですが…こっちもすごく面白いです!トレントの場面、ドキドキしました!どのキャラクターも皆、素敵ですね♪ファンタジーの不思議さやカッコよさがとても伝わってきます。無理なさらない範囲で、がんばってください! (2019年1月23日 22時) (レス) id: cc6696e063 (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 雪丗さん» アドバイスありがとうございました!参考になりました! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - 如月 唯奈さん» アドバイスが出来るかはわかりませんが、小説を読まさせて頂きます。読み終わりましたら、如月様の小説の方へコメント致します。少々お時間下さいませ。 (2018年12月12日 0時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 私もファンタジーのオリジナル小説を書いているのですが、表現が上手くできません……何かアドバイスくださいっ! (2018年12月11日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪丗 | 作成日時:2018年11月22日 0時